飲み会 三

 お酒を呑み始めてからしばらく、時刻は午後十一時を過ぎた頃おい。


「あぁぁぁ、お酒おいしい、おいしいよぉぉー」


 最初に出来上がったのは案の定、エリーザベト姉だった。


 エヘエヘと気持ちの悪い笑みを浮かべている。


 あまり酒には強くないのだろう。


 ただ、グラスを握る手付きはしっかりしたもで、姿勢も一貫して正座を崩していない。ピンと伸びた背筋は綺麗なものだ。セクハラを働くには、もう少し時間をおいてからの方がいいだろう。まだ若干の余裕がありそうだ。


 とかなんとか。


 少し前までは冷静に、エリーザベト姉と致することを考えていた。


 全力で。隙あらば。合体。そのつもりでございました。


 しかし残念ながら、自分も大して酒には強くないのだ。


「だろぉ? そうだろぉ? やっぱりお酒は最高なんだって」


 同じようにウヘウヘと、気持ちの悪い笑顔で同意を示す。


 飲酒作用により股間は萎縮。萎えまくり。


 マジでポークビッツ


 だけどテンションだけはアメリカンドッグ


 こうなると相手を酔わせてどうの、なんて状況ではない。むしろ自身の方が前後不覚。可愛い女の子とのまたとない機会を受けて、しかし、それでも身体はお酒を求める。ゴクゴクとしてしまう。


「どうしよう、セックスしたいけどオチンチンが勃たないの」


「はぁ? 貴方、もしかして不能なの? 最低ね! 最低っ!」


「言葉責め? 言葉責めしてくれるの? あざます! あざます!」


「っていうか、その顔でセックスとか、うふ、うふふふふっ……」


 エリーザベト姉の配置はこちらの正面。正座によりムニっと膨らんだムチムチの太股が最高である。最高であります。真っ赤なズボンの上からでも、肉付きの良さがはっきりと窺える。ムチムチ太ももロリータとか、エロスの権化。


 これを惜しげもなくバシバシと叩きながら、先方は可愛らしく笑う。太ももパンパン。そんなに叩いていいのですか。いいのですね。僕も叩きたいです。いいや、むしろ舐めたく存じます。衣服の生地の上から唾液を染み込ませたくペロペロ。


 だけど、チンチンが勃起しないんだ。


「死ぬ前に一度くらい交尾したい、セ、セックスしたいよぉ……」


 っていうか、もしかして自分が一番に酔っている可能性。


 ふと気付けば何気なく口にした台詞がお下品。


 いやしかし、自分に嘘は吐けませんから。仕方がありませんから。


「なによそれ、惨めねぇ? どう? どんな気分なのぉ? 一度もセックスできないまま、未使用のチンチンを抱いて死んでゆくのは。もしかして悲しかったりするのぉ? 寂しいのぉ? それとも切ないのぉ? うふ、うふふふふっ」


 なんという惨め。このまま童貞のまま死んでしまうのか。


 自らが致したいと、本心から思った相手と致せぬまま。


 それも僅か五日後に。


「た、助けてくれよっ、おぉぉ、鬼っ子ぉっ!」


 すぐ隣で飲んでいる鬼っ子に泣きつく。


 お酒の力で気分も盛り上がり。


 勢いのままロリボディーにギュッと抱きついてしまう。


 あぁ、柔こくて気持ちいい。推定八歳。


 めっちゃ幸せな気分なんですけれど。


 ロリっ子、可愛い。抱きついて幸せ。ずっとこうしていたい。


「あんだぁ? お前、セックスしたいのかぁ?」


「そう、セックスしたいの! でもオチンチンが立たないの!」


「それじゃあ無理だろ?」


「無理かーっ!」


 無理だったー。ちっくしょう。


 あー、でも、気持ちがえぇわぁ。


 この鬼っ子、柔らかくて凄く気持ちいい。


 ずっと抱きしめていたい。


「ところでこの男、随分と酔ってるわねぇ」


「だな! 昨日は私の方が酔ってたけど」


「面白いし、このまま外へと連れ出しちゃいましょうか」


「おぉー? 外に行くのか?」


「駄目かしら?」


「つまりあれか、月見酒っていうやつだな? 私は知ってるぞ?」


「それもいいわねぇ。あ゛ー、なんというか、風流? 気持ち良さそう」


「よぉし、それじゃあ外に行くぞぉ! 外へっ!」


 鬼っ子と金髪ロリ吸血鬼が何か言っている。


 何の話をしているのかと意識したところで、全然分からない。


 だって、お酒、最高。


 頭がふわふわして、もうこれは最高でしょう。


 そんな最高の気分に心身ともに委ねていたところ、急に腕を引かれた。グラスを手にした腕を、グイッときたからなんでしょう。お酒がこぼれちゃったじゃないの。これから美味しく頂こうと思っていたのに。


 どちらさんかと思えば、我が愛しのエリーザベト姉。


 なんてこった、こんな可愛い女の子に腕を握られちゃった。


「さぁて行くわよ! 貴方も付いてきなさぁいっ!」


「あぁ、コジマちゃん、愛してるぅ」


「気持ちが悪いこと言ってないで、さっさと付いてきなさい!」


 腕を引かれるがまま、我々は安アパートを後にした。


 連れ出される直前、咄嗟に酒瓶を掴み取れた点は自身を高く評価したい。

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