第十二話 衣装

 いじめの一件を解決した琢磨。担任がいじめの根源を説教する間にもう大丈夫だと伝えてこいと、琴の家の住所が書かれた紙を渡された。

 このご時世に個人情報を渡すとは知らねえぞと琢磨は思った。

 紙に書かれていた住所に向かうとそこには『竹内神楽衣装製作所』と書かれていた。

 インターホンを鳴らすと目の下にクマをつくった琴が出てきた。


「何?」


 と睨まれて、少しビビったが、


「いじめをしていたやつらは見つけて干しといたからもう学校来ても大丈夫だよ」


 と言うと、


「そんなやつらなんかはなから気にしてないよ、それ以上に衣装製作が間に合わなくてそれで学校を休んでたんだよ」

「おい、学生なら学問を優先しろよ」

「私んち一ヵ月に一回あるかないかだから、それを逃したら収入が0なんだよね」

「なんかごめん」

「いいよ、同じ職人なら分かってくれるだろ」

「神楽面職人だけどな」

「で、何?」

「何、ケンカ売ってんの」

「そんなわけないじゃん、それ以外の用事で私の家に来たんだろ」

「まぁ、それもあるがその状況で言えるわけねぇだろ」

「どうせ、葛城山、大鬼の鬼着でもつくれというんだろ」

「分かってなのかよ」

「大丈夫もうつくってあるよ」

「お前はエスパーかよ。てか、無理って言ってなかったけ」

「あぁ、あのときは休みでがーとつくるのが私のタイプだから断ったんだけどね、なんかいきなり仕事が来て、手伝ってたらなんか勢いでつくっちゃった」

「そ、そうなんだ。嬉しいんだが手持ちがな」

「十万で売ってやるよ」

「いいのか!?通常は30万くらいなんだぞ」

「別にいいよ。もう使ってない古いものばかりでつくったからな」


 そう言ってことが鬼着を持って来た。


「りっぱな蜘蛛に蜘蛛の巣が張ってある。まさに土蜘蛛にふさわしいなその衣装」

「そうだろ、結構こだわったりしてるんだぜ」

「いや、ありがたいよ、これを十万で売ってもらえるなんて」


 とありがたく受け取ろうしたときだった。


「ただし条件がある」

「な、なんだ」

「飾り面をつくってくれ」

「なんだ、それならお安い御用だよ」

「期限はないから頼むよ。あとこの鬼着は私があとで包装して学校に送っておくからな」

「分かった。最高の面を待っとけよ」


 そう告げて、琢磨は竹内神楽衣装製作所を出た。

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