第六話 石見神楽 甲山神楽社中 貴船

 19時になり司会者が出てきて、アナウンスをする。


「次は、甲山神楽社中こうざんかぐらしゃちゅうによります貴船きぶねです。貴船は、 女が現れ、下京に暮らす男の妻だと述べる。夫に離縁された無念から、貴船明神に三七(二十一)日参詣したところ、霊夢を見たという。憎い夫に怨みを報いようとするならば、毎夜丑(うし)三つの時を違えず、赤い衣をまとい、頭に三つの金輪(かなわ)を据えて、金輪の足に火を灯して、宇治の浅瀬を渡るならば鬼女となるだろうというお告げを聞いたのである。

 一方、男は妻を離縁したところ夢見が悪いと言い、安倍晴明に面会を求める。晴明の弟子の三吉が案内する。晴明は確かにこの頃、毎夜貴船神社に丑の刻参りをする女がいると聞く。男の妻に相違ないと言った。禍を逃れるために、茅がやの人形を人尺(人の背丈)に作り、五尺の棚にこれを立て、幣帛(みてぐら)を奉る。その時女が姿を現し、真の夫と思い、命を取ろうとするだろう。天には雨が降り、雷電が鳴り響き、暗闇となり女はこの人形を掴み取って虚空へと昇らんとするだろう。そうならば男の身を害することはないから安心せよと述べた。

 そして、鬼女と化した女が現れ、人形を掴み取った。

 女は「憎い夫を打った。願いがかなった」と言って人形を打つ。というお話でございます」


 琢磨は内心怖いなと思った。確かこの演目は呪詛をテーマとしている陰惨な舞いから、明治以来上演を禁止させらていたはずなのだが、今では普通に舞っていることから大丈夫になったのだろう。

 琢磨はさっき出店で買った焼きそばとおでんを小さなアウトドア用の机の上に置き、胡坐をかきながら、舞台を見つめた。

 最初に楽、大太鼓、小太鼓、手打ち金、笛の四人が出てきて観客に向かい礼をする。それを見て琢磨を含め観客も拍手をする。

先に笛が音色を奏でた。そして大太鼓がそれに合わせ叩きだす、それに合わせ小太鼓、手打ち金も叩きだした。

 最初に女が出てきて、神のお告げをきく。そして、幕の内に入ったり次に出てきたのはその旦那だった。安倍晴明に悪夢を見ると助けを求めるシーンだった。そして、最後に女が藁人形を抱き、亡くなった。

 楽の人たちは額に汗を浮かべていた。観客に向かって礼をして、幕の内に入っていた。

 拍手喝采。さすが石見で一番上手いと言われている神楽社中だ。ファンが多いのだろう。

 次は21時、稲田神楽団の滝夜叉姫である。

 琢磨は冷めたおでんと焼きそばを食べるのだった。


※引用 https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwju2of5uIfpAhWQP3AKHVlPBa4QFjAAegQIAhAB&url=https%3A%2F%2Fwoodenplane.air-nifty.com%2Flog%2F2017%2F09%2Fpost-1dec.html&usg=AOvVaw2tpZgC5XOeBAB8xavaghsV

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