第四話 歩むされど進まず
さらに寝たことで頭をスッキリさせることが出来た。
琢磨は作業室に入り、面作りの続きをすることにした。何度も何度も作り直してそれでも納得いかなくて。
そこでふと琢磨は神楽面ばかりじゃなくて別の神楽道具を見に行こうと思った。最寄り駅に向かい、島根県益田市に向かって行く。駅を降りて正面には神楽を踊る人形があった。時計台のようだ。
そこの近くに衣装を展示している場所があり、衣装に見入った。
スマホのカメラ機能を使い何枚も写真に撮った。益田市の町の様子も写真を撮り、帰りの電車に乗り帰宅した。
帰りの電車の中で何かお腹に入れればよかったと後悔するのだった。
・・・
「ダメだ」
琢磨は溜息を吐いた。
帰りの電車の中で閃きがあったが納得いくものは出来なかった。
「ダメだぁ」と言いながら両手で顔を隠し、座椅子にもたれた。
それから作業部屋を出て、洗面台で水を出し溜めて、顔をジャブジャブと洗った。タオルで顔を拭き、気分をスッキリさせた。
それから、それから・・・・・・。
そうして夜になった。
何も進まないまま時間だけは過ぎていった。
気分転換に外に出て蛍を見ようと玄関のドアを開けるとそこにはビニール袋があった。
中には栄養ドリンクとタッパーに入ったおかず。それと手紙だった。琢磨はそれを作業部屋へと持ち込む。
そして手紙を開けた。手紙の文字は丸文字で女子らしい書き方だった。
甘噛師匠へ
先日は何も知らない私が失礼なことを言ってしまい申し訳ございませんでした。私は思ってしまうことをすぐに口を出してしまうタイプで前の学校では友達は一人いませんでした。ただ、言い寄ってくる男だけで、それらから逃げる日々を過ごしてました。そんな日々の中、とある授業で『将来、何の職に就きたいか』という道徳がありました。私は前から職人に興味があり、叔父が神楽で使う蛇胴をつくっていることから神楽に触れてきました。とりあえず神楽を見てもらったほうがいいだろうと私は叔父に連れられ近くの神楽団に見学に行きました。楽が音を奏でリズムをつくり舞手がそのリズムを聞きながら舞う。舞にも感動しましたが、一番は神楽面でした。一瞬で一目惚れしました。そこから叔父さんに頼み込み神楽面をつくっている甘噛師匠の場所で学ぶことが出来るようになりました。神楽面作りを教わろうしてかかってきた電話で教わることはできなくなって。でも師匠は表情は楽しんでました。でも、時間が過ぎるとともに師匠の顔は険しくなっていきました。ご飯の時の話もなく美味しかったもありませんでした。それから思わず口をはさんでしまい師匠の逆鱗にふれ、ここに居づらくなり私は師匠のところから出て行ってしまいました。私は今叔父の家でお世話になっています。あの日ことを謝る事が出来るように。
私はまだ神楽面をつくりたいです。師匠のところで学びたいです。どうかもう一度弟子にしてください
日和 撫子
琢磨の目には涙が浮かんでいた。自分の都合で怒鳴り散らし、怖い思いにさせたのにまた弟子にしてくださいと師匠の元で学ばせてくださいと書いてあった。
正直、もう二度と弟子は取らないと思っていた。今までのこと全て自分が悪かったのに、師匠のくせに弟子に教えることが出来なかった自分が悪いのにさも私が悪いです撫子は言っていた。
何も悪くない。自分が悪いのだ。撫子は口を出していない質問をしていただけだ。それなのに、それなのに・・・・・・。
琢磨は原稿用紙を取り出し、返事を書いき、それを撫子の叔父、鳴子さん家のポスターに入れ、琢磨は布団に入った。徹夜をして良い神楽面は出来ないのである。
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