第3話 朝五時に起きまして

 昨日、鳴子さんが弟子となる人を連れてきた。それは、ハーフ美少女で都会とかでモデルをしていそうな風格があった。

 そんな美少女、撫子は今、琢磨のとなりで寝息を立てていた。

 あれから、とりあえず、家の中に入れ、トイレがどこにあるのか、風呂はどこにあるのか、家の中を説明した。その後、夕食を共に食べて、琢磨は残っていた勉強を終わらせた。撫子は工房の中を興味津々に見回っていた。

 琢磨が宿題を終えたのは九時だった。明日から土日と休日なので、それから零時まで役割分担を決め、それから琢磨は撫子からこの工房で何をしたいのか質問して眠りにつくことにした。

 琢磨はスマホの電源を付け、時刻を確認する。午前五時、早朝だった。職業柄、朝早く起きるのが習慣になっていた琢磨は、ぐっと伸びをして背骨を鳴らし、首も左右に動かし、ボキボキと鳴らした。

 それから、隣でスヤスヤと寝ている撫子を起こさないように布団を畳み、台所へ向かう。黒の布に猫のイラストが描かれた可愛いお気に入りエプロンを身に着け、腕まくりをした。


「さて、飯をつくるか」


 始めにご飯が二人分あるのを確認した。次に冷蔵庫にあるものを確認する。中には、卵、ウィンナー、鮭、麦味噌、刻みネギ、油揚げがあった。

 まず、二つの鍋に水を入れ、お湯を沸かす。お湯が沸く間に鮭をオーブンで焼く。お湯が沸くとどちらとも火を止め、片方のお湯を油揚げの油抜きに使う。

 つぎに油揚げを縦に均等に切る。もう一つの鍋に顆粒出汁を入れ、その中に切った油揚げを入れ、麦味噌を溶かした。味噌汁の完成。

 最後にフライパンに油を引き、卵の殻を割り、卵を入れ、白身の部分にウィンナ―を置き、蓋をして蒸し焼きにする。その間にご飯と味噌汁をお椀によそい、味噌汁には刻みネギを入れ、平皿に焼けた鮭を盛りそして、蒸し焼いた目玉焼きを平皿に盛った。

 見栄えが良い様にお皿を食卓に置く。時刻は六時。琢磨は撫子を起こしに行く。


「ほら、起きなさい。朝ですよ」


 布団を引っ張るが剥がせない。


「まだ、あと十分」

「いや、何子供みたいな言い訳をしてんだよ。もう高校生でしょうが」


 すると撫子が、


「まだ、まだ私は寝てるでしょうが!」

「なんで雪国!?てかお前はお前で私の弟子でしょうが!」

「弟子だからって師匠の言うことを訊くのはおかしいです」

「おかしいけど、ご飯が冷めるから早く起きて!」


 琢磨がそう言うと撫子はむくりと起き上がり、食卓までのそのそと歩いている。

 殻から出たなと思いつつ、琢磨も食卓に向かった。

 撫子と琢磨は手を合わせ「いただきます」と言いご飯を食べ始めた。

 撫子は、鮭を箸で切り、ご飯に乗せ口に運ぶ、そして、味噌汁を飲み、


「し、幸せ~」


 と呟いた。撫子が美味そうに食べるものだから琢磨は嬉しかった。

 二人とも朝ご飯を食べ終わり、食器を台所まで持って行き、水につけた。

 二度寝しようする撫子に、


「役割決めたでしょ」


 と、琢磨は流し台に置いた食器を指さした。撫子は、


「後でするから」


 と言うので、琢磨は、


「面作りは当分無しということで」


 というと、「それはいやっ」と言って撫子は急いで食器を洗った。

 琢磨はその間、撫子の布団を畳んで、食卓に座り待っていた。


「終わりました」


 と撫子が疲れた顔をしてやってきた。琢磨は


「もう疲れたということは今日は面作りはできないな」


 という疲れた顔から一転、元気な笑顔の顔となり


「面作りするんですか?!!」


 と言った。琢磨が


「取り敢えず、撫子が最初に作りたいと言っていた滝夜叉姫の鬼面でも作ってみるか」


「はい!」と元気な声で撫子は返事をした。

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