ラスト
佐々木実桜
今日君が死ぬ。
「ねえ、もし僕がもうすぐ死ぬって分かったらどうする?」
そうお前が唐突に言った。
「それは、自殺とかってこと?」
「そうだね、じゃあそうと仮定して」
「止めるって言いたいけどお前はそれで聞くようなタマじゃないから、お前が死ぬ前に死ぬかもな」
「…馬鹿だなあ、」
「なんだよ、そっちが聞いてきたんだろ」
「ほんと、馬鹿だよ。」
そう聞いた翌日、お前は死んだ。
飛び降り自殺だ。
マンションの屋上から、制服を着て飛んだらしい。
数日後、俺のもとに制服を着てどこか分からない綺麗な空をバックして撮られた動画が送られてきた。
「すぐに送ってしまえば君はすぐに来てしまうだろうから、少し遅らせてもらうよ。」
そう言って笑ってた。
「僕は君より後には死ねない。」
「なんで急にって思うかもだけど、それでも君より後には死にたくないんだ。」
「だから、先にいくよ。ずっと先で待ってるから、次に会えたら君の人生の話を聞かせてね。」
そしてばいばい、と。
俺には到底真似出来ない屈託のない笑顔で。
「あ い し て る」
声を発さず放たれた言葉。
そんな、くそみたいな動画。
「馬鹿はお前の方じゃねえか…」
あの質問の意味を、俺はやっと理解した。
お前には俺がもうすぐ死ぬことが分かったんだな、と。
だから、俺が答えたように、先に死にやがったんだ。
「ふざけるな」
俺が、お前の死に耐えきれずに死ぬ未来は見えなかったのかよ。
本来なら知ることができないはずの俺の死期を知ったからって、原因までは分からなかっただろ。
知らなければ、お前は死ななかったのか。
俺があんな風に答えなければ、お前が死ぬことはなかったのか。
お前は俺のことをよく分かっているようで、分からなかったのか。
「死期なんて、知るもんじゃねえよな。」
すぐじゃなくたって、俺はいくよ。
「お前が見えた未来は、間違ってなかったみたいだけど。」
予定より早いと思うけど、今会いにいくからな。
ラスト 佐々木実桜 @mioh_0123
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★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 2話
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