廬江の周瑜墓

 平原と並木、菜の花畑を抜けて周瑜の故郷へ向かう。ドライバーは我々が日本人だから気を使ってくれているのか市街地のタクシーのようなワイルドなブレーキングとハンドルさばきではなく、相当に安全運転である。ここが大陸であることを忘れてしまいそうだ。


 周瑜は名家の出で、美周郎と呼ばれ、音楽にも精通するイケメンだったことは有名。映画「レッドクリフ」でもトニー・レオン演じる周瑜の活躍ぶりは光っていた。ちなみにその「レッドクリフ」では当然のごとく曹操は残念な役回りであったが、あのダメおやじっぷりこそ人間味があって好きだ。

 役者の眼力も強く、佇まいも上品だったので好感が持てた。そんな曹操にひと泡吹かせた呉の知将、周瑜の墓にいざ参ろうではないか。


 廬江の街に入ると、大通りに周瑜大通の看板が見えた。おおお、周瑜の名を冠した通りだ!この出迎えにはテンション上がる!!有名人すぎてフィクションの世界に迷い込んだような気分になってしまう。ここは呉の地だし何となくお客様気分になり、緊張してしまう。

 周瑜大通をしばらく走り、車が停まった目の前に周瑜墓の石門が立ちはだかっている。説明パネルを見ると、周瑜墓はちょっとした公園になっているんだな。厳かな気持ちで周瑜墓の敷地に入ると周瑜の功績が刻まれた壁がお出迎え。出自と赤壁で曹操軍を破ったこと、後に病死したことが書いてある。

 赤壁では曹操がお世話になりました!!周瑜は36歳という若さで病で亡くなっている。現代で言えば働き盛りの一番元気な年頃だろう。イケメンで有能、この若さで亡くなったというのは天に愛されたというべきか。周瑜が生きていたなら、歴史も変わっていたかもしれない。


 石畳を進み、もうひとつ建物を通りぬけた先に周瑜墓はあった。石碑には紅い布がかけられており、お供え物も供えてある。未だに地元の人には愛されているんだな。像の土台をガンガン切り崩される曹操とは大違いだなあ。土盛りも立派だ。敬虔な気持ちで手を合わせたくなった。

 周瑜墓は大通りに面しているが、この墓のある場所は中に進んだところなのでとても静かだ。ふと石油工場のために墓を壊された夏侯惇を思い出し、やはり切ない気持ちになってしまった。


 夏侯惇の墓といえば、もしかしたら曹操高陵の横のでかいのがそれではないかという話もあるようだ。そうだとしたらガッツポーズで今度のお盆にでも墓参りに行くところなんだが、曹操高陵自体も信憑性が危ぶまれており今後どうなるのか見守っていきたいところだ。


 周瑜墓の周囲には回廊があり、大理石の石版に、周瑜の生い立ちから晩年まで一生を描いた物語が並んでいる。石版の彫りが若干浅いのが気になるところだが、こうして周瑜の活躍ぶりが紹介されているのは嬉しい。孫策と同い年で堅い友情で結ばれていたというのも胸熱エピソードだ。この石版、ちゃんと人物の名前が書いてあるのが親切。


 そういえばここ、昔は入場料を取っていたような表記があったな。それでここまで整備したんだろうな。来る前に調べたサイトでは14元って書いてあった。今や門番もいない。そのまますたれてしまわないよう願う。逆側の回廊にはかつては何やら名産品を販売していたらしい今や空のショーケースが置きっぱなしにしてある。周瑜グッズとかあれば土産でたくさん買うのにな。大陸の土産物屋の残念っぷりはよく分かったので期待はしていなかったけどさ。


 その近くの壁に謎の周瑜のテーマソングが貼ってある。ガイドのおっちゃんが鼻歌を歌い始めたので、知ってるんですか?と聞いたら知らないって…適当かい!

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