中国国内線飛行機あるある
中国は広い。高速鉄道が発達しているといえども、やはり鉄道6時間なんていうとゾッとしないので飛行機の方が楽だ。呉の遺跡は上海近郊だが、魏の許昌や蜀の成都へ行こうと思うと国内線の飛行機を利用することになる。中国旅行で飛行機を利用するとヒヤヒヤすることも多い。遅れ、遅れ、そして遅れだ。旅慣れていない、中国語はニーハオしかしゃべれない2度目の三国志旅で心臓が凍ったときの話。
許昌・亳州での楽しい三国志遺跡巡りを無事終えて帰国の途に鄭州の空港に到着。チェックインも無事完了、後は出発ゲートで待つのみである。ゲートが変わるかもしれないことは百も承知、気をつけて案内表示を見て落ち着いて行動すれば問題ない。…はずだった。
ここで、この旅最大の事件が起きた。案内画面を3度見くらいして向かった3番ゲート。ここが上海浦東空港へ飛ぶ便の搭乗口となっている。待っている間に売店で買ったカシューナッツをぼりぼり食べながら時々顔を上げて案内表示を見ていた。搭乗時間になってもまだ案内は始まらない。案内コーナーに立っている美人の係員がおもいっきり鼻をほじっている。時計を見ると搭乗時間がすでに過ぎている。いつもこんなもんだよな~、そう思って画面を見ると、なんか行き先が変わってる。浦東じゃなくてウルムチとかなんかそんなところになってる。まさか、気が付かないうちに搭乗ゲートが変更されたのか??それを鼻をほじっている美人係員を見ていたために気が付かなかったというのか!?
これはまずい。どのゲートになったのか、ゆっくりと切り替わる案内表示ではなかなか出てこない。あわてて総合案内の表示を確認する。なんと、浦東行きはいつのまにか19番ゲートに変更されているではないか!!19番て、どこ!!?エスカレーター降りたところだって!?めちゃくちゃ遠いのでは!?この時点ですで大パニックとなってしまった。鄭州の空港でおいてけぼりをくらったら…飛行機の別便予約の方法がわからない、今回案内してくれた先生に助けを求めようにも授業ですぐには返事がないだろう、そしてなにより鄭州の空港は日本語通じない。やばい陸の孤島だ、四面楚歌だ、孔明の罠だー!!もうしょうべんちびりそうとはこのことだ。
やばいやばいやばい呪文のように頭の中で渦巻く言葉、そうだ、まず飛行機がまだ飛んでないかもしれない、誰かに頼んでこれから乗ります!!って連絡してもらえばいいんだ!サービスカウンターに突撃し、悲愴感あふれる顔で「へ、ヘルプミー…!!」それしか言えなかった。「プリーズ…ヘルプ…!!!」搭乗券を見せて飛行機に待ったをかけて欲しい、そう伝えたいのだが、カウンターのねえちゃんはあっちあっちと向こうを指差す。ダメだ埒が明かない。それならダメ元で19番ゲートに行けばまだ係員が残っているかも?私は走った。ひたすら走った。とにかく、飛行機を止めなければ。エスカレーターも人をかき分けて駆け下り、19場ゲートに到着するも、そこには誰もいない。
ああ、行ってしまった。もうみんな上海行きの飛行機に乗り込んでしまった…。絶望と悲しみに押し潰されそうになる。その反面、幸いなことにもう一日休みが余分にあるのでこの鄭州空港のベンチで寝て翌日の便のお金を払って上海まで帰れば、何もなかったかのようにちゃんと出勤できるではないか…こういう乗り過ごしたときは海外旅行保険は効いただろうかと瞬時に考える冷静な自分がいた。ダメだ、諦めてはいけない。このフロアはほぼ無人だったが、18番ゲートに係員のおねえさんがいる。ダメ元で飛行機と連絡を取ってもらえないだろうか!?「えくすきゅーずみー、ヘルプミー!」中学生英語を並べて航空券を見せる。おねえさんは何やらPC画面で照会をしてくれているようだ。そうだ。そのパソコンで飛行機を止めるんだ早く!そう思ったが、「19」と言っている。「アー、ノ―ワン…ピープルいません!」19番ゲートに人いないじゃん、もう時間も随分過ぎているし搭乗しちゃってるじゃん!そう言いたかった。しゃあねえ奴だな、という雰囲気でおねえさんは私の航空券の搭乗ゲート部分に19とサインペンで殴り書きした。
ん、こんだけ調べて19番で良いといっているってことは…再度誰もいないはずの19番ゲートを振り返ったそこには…だらだらと荷物を持って移動してくる人民たち…。なんだ、変更になって私が一番乗りだったのか…!!!一気に肩の力が抜けた。「せんきゅう…」脱力したままおねえさんに礼を良い、19番ゲートで待つ人の群れの中に溶け込んだ。慣れない土地で飛行機に置いていかれる恐怖感、この10分ほどの出来事、一生忘れないだろう。ステータスを見ればまだ搭乗手続きが始まっていないことが分かったはずだが、焦るとこのざまである。しかし、今やベンチは満席なのに数分前にはここに誰もいなかったんだよ、そりゃもう皆飛行機に乗り込んで飛んで行ったと思うよ。極限の恐怖による臨死体験で魂が抜けた。出発時刻の45分遅れで搭乗が始まったので正気に戻りかしましい人民たちと共にシャトルバスに乗り込んだ。無事に飛行機が飛んだ時には神に感謝し、心底安堵した。
海外旅行慣れしている人にはなんだそんなもん、という話かもしれない。しかし、私はこのときの恐怖を一生忘れないだろう。それでも三国志遺跡を見たくて旅に出てしまうのだから、全く懲りないのである。
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