超魏推しテーマパーク 許昌曹丞相府

 許昌の曹丞相府は曹操を中心とした魏メインのテーマパーク。石造りの門の向こうに見えるのは威風堂々とした曹操像!!許昌やっぱり許昌!!恰幅が良いな!それに顔もいかめしい。曹操って本来こういうイメージなのか。三國無双の曹操はメチャクチャかっこいいけど一般的なイメージは漢服のおっさんだ。それでも本場で拝む相想像はテンションが上がる!余すところなくその姿を写真に収め、気が済んだところで曹丞相府へ入場。まず目に入るのは、曹操が荒波を前に佇む巨大な銅板。「観滄海」をモチーフにしたもの。感激で思わず身震いしてしまう。


 振り返ると、迎賢館と名付けられた建物。中に入れば、魏の軍師、武将達の横顔を両端にあしらった求賢令の木製レリーフ。すごい、武将の名前が分かる!!分かるぞ―!!有名どころの武将・軍師の名前は日本で見ている漢字そのまま、彼らの名前は本国でもこの漢字なんだなと改めて感銘を受けた。求賢令の周囲の壁には魏武将のイラストと説明のパネル。夏侯惇や夏侯淵、張遼を見つけてによによが止まらない。ゲームやコミックの中だけでなく、彼らは本当にこの国にいたんだ・・・という謎の感動を呼ぶ。こんなに曹魏がクローズアップされてるなんてスゴイ。どちらを向いても魏の武将、これが興奮せずにいられるだろうか。まさに魏ィズニーランドであるこれで曹操の着ぐるみが登場するなら一緒に写真撮ってもらいたい。


 続いて、「議事庁」へ。ここでは魏の武将・軍師たちが曹操を囲んで軍議の場面を再現している。曹操の背後に許褚、正面に立っているのが夏侯淵。右側に郭嘉、賈詡が立ち、席には荀彧ら軍師が並ぶ。夏侯惇と曹仁は曹操の左側に立っている。席に徐晃や張遼の姿もある。人形の顔はどことなく「Three Kingdoms」を意識しているように思える。顔もリアルで、衣装も甲冑や着物までよく出来ており、なかなか壮観である。ちなみにお金を払ったら衣装をレンタルして、この中に混じって写真撮影も出来るそうだ。中国ではこのような参加型の展示をよく見かける。こんなそうそうたる面子に混じるなど、あまりに恐れ多いので写真は遠慮しておいた。(でも柵の外からちゃっかり夏侯惇と一緒に写った)軍議の場の脇には孫子兵法の電子本が設置してあり、タッチパネルでめくる仕掛けになっている。謎のIT技術の使いどころに中国ならではのセンスを感じた。こういう仕掛け好きみたいなんですよね。いや~畳み掛けてきますよこれは。楽しい、楽しすぎる!!


 庭に出ると京劇のお面を模した不思議なオブジェが並ぶ。なんだかよくわからないがカッコいい!何かと思えば、これは実は三国志武将。曹操、関羽、夏侯惇や夏侯淵、孔明や魯粛、司馬懿といった面子だった。


 一番奥の大きな建物は「賦詩楼」で、1階は曹氏の詩をテーマにした展示になっている。正面に曹操、曹丕、曹植の銅像があり、周囲には一族に関するパネル展示がある。曹操の嫁の一覧を見ると、ほんとにこのおっさんは…と思ってしまうのだが、これだけ嫁や妾がいてもちゃんと面倒見てたというのはやっぱりすごいのかもしれない。曹操は死ぬ間際には、妾たちが手に職をつけて生きていけるようにと気にかけていたくらいなのだ。

 

 曹沖と象の逸話をホログラムを使った仕掛けで紹介しているコーナーがあった。曹沖は曹操の子で、13歳という若さで早世している。曹沖は聡明な子だったそうだ。ある時、曹操が象の重さをどうやって測れば良いか尋ねたが、誰も答えられなかった。その中で曹沖は水に浮かべた船に象を乗せ、印をつける。象を下ろしたあとにつけた印のところまでおもりを乗せることで象の重さが判る、と答えたという。三国志にこんなとんち話があるとは知らなかった。ちなみに象は孫権が送ったという。ちょっとした嫌がらせな気がしなくもない。中国の学生さん曰く、この話は中国の学校で教科書に載っているらしく、みんな知っているとのこと。三国志で学習ができるとは、何ともうらやましい。三国志が生活の中に自然に融け込んでいる、と感じる一面だった。


 2階に上がると、三国志に登場する美女達の絵が出迎えてくれる。こうして並ぶとゴージャス。ところで、日本では昔の美人、いわゆる平安美人などはしもふくれのおちょぼ口、ってな感じで今の美人とは規格がズレていると思うのだが、三国志の美人はどうだったのだろうか。傾国の美女なんてどれだけスゴイ美人だったのか想像もつかないのだが、男性の場合、耳が肩まで届くとか、手が膝まで届くとかちょっと変わった風体が英雄の相とされている話があるので、当時の美人の規格も現代とは違ったものだったかもしれない。


 3階には、曹丕に7歩歩くうちに詩を読めという陰湿なパワハラを受けたものの、見事に「七歩詩」を完成させたという曹植の逸話を元に七歩を歩くステージが作られていた。こちらもある意味、体験コーナー。何事にもアクティブな中国人の意気込みは見習うべきである。そして、どこがシャッターチャンスなのか良く分からないが、このステージで写真撮影をするのにお金を徴収するらしい。謎だ。


 魏のパビリオンを一通り見学して、庭を歩くと曹操の詩を巨大な木簡に彫ったものが並んでいる。なかなか粋な演出だ。雨のためすべてを写真に収めるガッツが無かったのだが、もう一度ここに来ることがあれば、ゆっくり曹操の詩の世界を堪能したいものだ。また、外には曹操が兵を隠した洞窟という設定の展示施設がある。地図やジオラマ、洞窟内の武器庫を再現した部屋やインディ・ジョーンズみたいな仕掛けがあり、大人から子供まで楽しめる仕組みになっている。周囲を囲む回廊には曹操の一生を描いた銅板パネルがあり、かなりの数だったのでじっくり見学していると時間を忘れてしまいそうだった。


 曹丞相府はパネルや人形などの展示が主で、ここには歴史的な遺物はない。しかし、曹魏テーマパークとも言える曹丞相府、曹魏ファンであれば訪れて損はしないと思う。というか、私などは相当大はしゃぎしてしまった。出来の良いパンフレットもあったので、おみやげに購入。いや~楽しかった!

(2015年発行同人誌より改稿)

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