三国志グッズを求めて

 私には収集癖がある。書籍は紙媒体で持っておきたいし、好きなもののグッズはとにかく買う。おかげさまで自室は本棚、コレクション棚が並ぶ完全なヲタク部屋となっている。そんな訳で、三国志の本場である中国に行くことになったときに、とにかく三国志ぽいグッズがあったら買ってこよう、と息巻いて旅だった。


 初めての遺跡巡りは許昌。魏の都、曹操の本拠地!!ということで魏グッズがたくさん手に入るんじゃないかと期待していた。買い物しすぎてスーツケースに入らなかったらどうしようと無駄に心配までしていた。


ところが、ない。


 許昌は三国志遺跡が豊富な地のひとつで、街中には三国志テーマパークのような観光スポットまであるのに三国志グッズがとにかくない。これには驚いた。日本で織田信長関連の史跡を訪問したときにお土産屋にずらりとならぶ戦国武将グッズの豊富さには驚いた。信長だけでなく、有名武将のモチーフの多種多様なグッズがある。キャラものから家紋などのデザイン系まで、お気に入りの武将がいるならつい揃えたくなるようなラインナップだ。

 私はまさにこのイメージで三国武将のグッズが並んでいるのではないかと思っていた。期待は完全に裏切られた。中国といえば三国志じゃないの?(←乱暴すぎる)三国志グッズ作っても売れないのか?お土産屋があれば覗いてみるが、あるのはお菓子やしょうもないおもちゃだけ。ショックだった。


 それでも許昌で買えたものもある。「曹丞相府」という曹魏推しのテーマパークではパンフレット、許昌の歴史の本、これはもちろん現地語だけど写真で充分楽しめる。「春秋楼」という関羽推しのお寺で関羽のミニチュア。「許昌博物館」で図録。図録はかつての許昌の三国志遺跡の写真が掲載されており、これはとても価値がある。許昌在住で案内してくれた先生も絶対買った方がいい、とおすすめの品だった。関羽のミニチュアは、一緒に街を案内してくれた学生さんがプレゼントにとその場で買ってくれた。その心遣いに感激した思い出の品だ。


 キーホルダーやマグカップ、手ぬぐい、ぬいぐるみなど、日本のお土産の定番のようなグッズは本当に無かった。人物をデフォルメキャラクター化したり、格言や家紋をグッズにするなどという発想はやはり日本のお家芸というか、得意技なんだなと思った。


 許昌にはその後再訪することになるが、街をあげて三国志を観光資源に生かそうと頑張っていた。新しい三国志観光スポットができて、ロゴをデザインしたり、曹操の名前を入れたパッケージでお土産のお菓子を作ったりだんだんと変わってきているようだ。そのうち魏グッズがたくさん出てくるかもしれない??


 成都には武侯祠(孔明を祀る祠)の横に「錦里」という昔の町並みを再現した観光スポットがある。ここには日本人が考えるような三国志グッズがたくさん売られている。武将のデフォルメマスコットやしおり、マグネットなど。蜀の地だけあって蜀の人物のラインナップが豊富。魏と呉は君主の曹操、孫権くらいかな・・・蜀人気はすごい。武将を京劇のマスク風にデザインしたしおりなど、とてもセンスが良くてつい全勢力保存用に欲しくなる。ここに来れば散財間違いなし!許昌で見た貧相なお土産店の印象が覆る瞬間だった。他の三国志テーマパーク的な場所もいろいろ訪問したが、グッズを買いたいなら錦里が一番だった。


 三国志に関係無い場所でも売っているのは、孔明の羽扇。30㎝くらいあり、本物の羽を使ったなかなか本格的なもの。しかも値段も安く、500円もしない。孔明ファンならひとつは持っておきたい。観光地ではよくたたき売りされているのが連環画。B6サイズの半分くらいの冊子で、三国志演義の絵本のようなもの。赤壁や五丈原など1エピソードで売られている事が多い。水滸伝や西遊記などメジャーな物語でいろんな種類がある。これも一冊100円もしない値段で買える。このようなものは三国志に関係する観光地よりも一般的な人の多い観光地の土産物店の方が見つけやすい。


 中国では、名前の漢字キーホルダーをよく売っている。これも観光地に必ずある。いろんな形状のものがあるが、木彫りの板に姓の一文字が刻んであり、背面には姓の由来が買いてある。三国武将の姓が結構あって、好きな武将の姓があるとつい集めてしまう。曹・孫・劉はもちろん、郭、鍾、賈、張など。ただ残念ながら一文字タイプが多いため夏侯はほとんど無い。司馬もありそうなのに見つからない。このパターンで扇子を売っているのをみつけた。扇子も観光地に必ずあるアイテムで、なかなか出来が良い。絵ガラは風景や中国美女などが多いが三国志ものも結構ある。その中に名前タイプがあった。大きな扇子を開けば姓一文字、裏面にその姓の有名な人物の解説があるもの。これも推し武将の姓があれば欲しくなる。


 グッズには興味がない、という方には書籍はいかがだろうか。白文の三国志書籍はどこの書店でも見つけることができる。残念ながらちくま正史のようにすべての伝を網羅しているわけではないので、推し武将の伝があるかどうかは中身を確認した方が良い。文字だけの本は無理、というときには絵本コーナーに行こう。子供向けの三国志本で、イラストがなかなかカッコいい本がある。歴史本のコーナーには君主系の武将に関する書籍も多い。曹操、孫権、劉備、諸葛亮、司馬懿あたりはすぐに見つけることができる。ちょっと変化球で詩の本。曹操や曹丕、曹植が好きなら魏晋南北朝時代の詩で探してみると良い。


 地名萌えの方には地図がおすすめ。行った先の地図は思い出にもなるのでコレクションにも最適。ネットで用事は済んでしまうかもしれないが、紙の地図には思わぬ情報が載っていることもある。地図は鉄道などの駅売店や書店で購入できるほか、観光地の道ばたでも売っていることがある。


 ちなみに三国志的お土産で一番有名な武将は誰か。お気づきかと思うが関羽である。関羽は三国武将というよりもはやゴッドなので、お手頃なフィギュアからどでかい像、お守りでもよくモチーフになっており、中国全土で何かしら見かけるのは関羽。日本でも横浜や神戸の中華街に行くと必ず関羽グッズを目にしているはずだ。




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