プラネテス
怪物、クリーチャーについて話し始める。
「水希と日下が見たクリーチャーは協会ではプラネテスと呼んでいる、僕たちの住む宇宙とは別の宇宙に住む存在だ」
「プラネテスの目撃や被害は人類史が刻まれた頃から確認されていた、恐らく有史以前から人類はプラネテスと関わっていたはずだ」
推測だと前置きした上で、崎原周辺には河童などの妖怪伝承とともに神隠しの伝承が残っている。肝試しで水希が目撃したプラネテスはそうした言い伝えの背景の一端を担っていると考えられる。
つまり水希のお父さんは郷土史の研究をきっかけに異界の門に近づき過ぎたのでは?と説明した。
何故神隠しとプラネテスが結びつくのか?プラネテスは空間を引き裂き、此方と彼方の宇宙を移動できる能力をもっているのだが、引き裂かれた空間はプラネテス以外の存在、例えば人間も通過することができる。
これは協会が把握している情報なのだが、プラネテスは人間やまたはある程度大きさの物体なら、掴んだまま時空の裂け目に引き摺りこむことが可能だという報告がある。
「パパが、あの怪物に?」水希の顔が青ざめていく。
「推測だ、その可能性があるという程度で確証はない」ちなみにある時期から崎原周辺の神隠しは確認されていない。
肝試しで目撃されたプラネテスも水希を連れ去っていないことを考えても、何かしらの理由があってプラネテスは崎原周辺では狩りができなくなっているようだ。
しかし水希のお父さんは連れ去られた可能性があるのだ、それは「確証はないが、これからそれを試してみないか?」
水希は得体の知れないものを見る顔で、僕を凝視した。
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「水希が白昼夢で見たように日下はプラネテスと遭遇している、協会はプラネテスについての伝承や書物を研究して対処法を探し当てた、つまり元の宇宙に追い返す方法だ」
「協会は追い返す方法を探すために、召喚する方法から当たりをつけた、そしてそれは各地に断片的に伝わっていた」
「協会は時間をかけて断片を繋ぎ、抜けたピースは試行錯誤を繰り返して、ある召喚魔法を探り当てる」
水希は何かを感じ取った、そして持参していた刀子をテーブルの上に置く。
そうだ水希、おまえの直感は正しい。
「それは刃物に特殊な印を刻み魔力を付与することで、プラネテスを召喚使役する呪具を作成する方法だ」
蛇に睨まれた蛙の如く、水希は僕から目を逸らせない。
「呪具となった刃物で傷つけられた対象をプラネテスは連れ去る、ただし出現は夜間になってからで有効期限は夜明けまで、またある程度の大きさを超えるとプラネテスは連れ去ることができないと協会の実験調査で判っている」
陽は傾き、部屋は翳る。
「プラネテスを限定された用途でのみ使役できる呪具、それが水希がもっている刀子の正体だ」
水希が見た『日下のプラネテスとの遭遇』の記憶は、協会の実験調査の一環で行われた召喚の記憶なのだ。
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