山村聡太郎

小早川水希

僕が郷土史同好会の部室へトイレから戻ってくると、御乱心の水希とそれに絡まれて尚無表情の日下がいた。

水希を落ち着かせた後、話を整理するため僕は水希と2人で話すことにした。

日下は、廊下で待機させて部長の秋月先輩が来たら入室しないように、何処かに連れ出せと命じておいた。


水希の話をまとめると


1995年8月、水希小5の時、肝試しで怪物に遭遇

遭遇後、2回だけ他人が体験した『怪物との遭遇記憶』を白昼夢で見たという。遭遇体験により能力が覚醒したと本人は信じている。

この2回については見た怪物が、水希が見た怪物とは違う形状をしていたらしい。

この記憶の詳細については後日聞き取りを予定している。

1997年12月、水希中1の時、父親失踪


2000年4月7日、高校入学

4月13日、郷土史同好会見学

4月14日、父の遺品の何点かを同好会部長に鑑定依頼

この日、すっかり遅くなって下校すると、校舎にいる『肝試しで見た怪物』を目撃する。

正門辺りから校舎を見た時、先程まで2人が居た3階の図書資料室に怪物はいた。怪物は直ぐに移動して死角に入り見えなくなった。


4月17日、見学に来た僕と再会

本日4月18日、日下を見ていたら白昼夢に突入

日下の記憶の中の怪物が、水希が肝試しで見た怪物と同じだったため、同調が強く働き混乱したと推測される。取り乱して先程の騒動となる。


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「トウスって知ってる?」一通り話が落ちついたところで、水希が訪ねてきた。


トウスが刀子のことなら「古墳の副葬品の小刀のこと?木簡の書き間違えを訂正する文房具だよね」


水希は頷き話し始めた。


13日の木曜日、郷土史同好会に見学に来た水希は、現在唯一の部員で部長の秋月梢に、父親が郷土史に興味があり色々な資料をもっていること、それを調べるために入部したいと伝えた。

秋月はいきなり全てを調べるのは難しいが、まずは何点かもってきてかまわないと了承。

また正確な鑑定には時間がかかると説明された。

14日に水希は、さっそく数点の遺留品をもっていく、その中に刀子のレプリカがあった。


秋月の説明によれば、僕たちが住む崎原にはイラ塚古墳群と呼ばれる史跡があり、そこから出土した刀子のレプリカではないかという。秋月からは詳しくは調べてみないと判らないといわれた。

他の資料の話しも聞いていたため相談は長引く、その日の下校時に水希は怪物を目撃する。


その刀子には印が彫刻されている。

円形の下部が閉じていない印で、円の中心部から3本線が、円の開いている場所を通過して外に突き出している。


それと同じ印が刻まれた短剣を白昼夢の中で美由紀がもっていたと水希は話す。


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僕は水希に全てを話すために準備がいることを伝える。

今週の土曜日まで待ってほしいと打診した。

水希も了承してくれたので、その日は解散した。

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