混濁
白昼夢から醒める。
目の前には美由紀がいる。
『美由紀もあたしが肝試しで見た怪物と、同じ怪物を見たんだ』
今まで誰にも話せなかった孤独が押し流されていく。
「ねえ、その頬が垂れ下がって、鼻から一直線に切れてる、首のない化け物、そいつについて、知ってること教えてよ」考えなしに口走ってしまう、でも同じ体験をした美由紀なら判ってくれる。
無表情で「何の話?」と美由紀が答える。
そうだね、そうだよね判らんよね「何って美由紀の記憶の話だよ」そうなんですよ美由紀ちゃん、あたしも見たことあるの、その怪物。
間があってから、美由紀が答える。
「わたしの独断ではその情報は開示できないの、ごめんなさい」美由紀が少し困ったように話す。
なんと、美由紀ちゃんの他に誰か怪物のことを知っている人がいるのですか?
はっ!もしかしてソータ?それで何時も近くにいたのか。
そうかそうかソータ、お前男だな、美由紀ちゃん守っていたのか。
美由紀ちゃんが周りから変な目で見られないよう、口止めしているんだな。
「誰の許可がいるの?山村くん?」怖いもんね、ソータを信頼してるんだね。健気だー美由紀ちゃん。
ガラガラと音がして、扉が開くと聡太郎が入ってきた。
おいこの男前、何時もしかめ面の怖い顔は怪物を警戒していたのか、マジナイトか。
「ねぇソータ、美由紀が教えてくれないの、すごい大事なことなの、もう本当にわたしの生死がかかっているといって過言じゃないんだから」
だから、ソータお願いあたしも助けて。あたしまた見たの。
「何で教えてくれないの?って聞いたら、ソータに口止めされているって、何でソータ?あたしに意地悪してるの?キライなの?」
あたしだって怖いんだから、ずっと怖かったんだから。今だって学校に、この部屋に...
「水希、何をいってるのか全く判らない」
ソータはシッカリとした落ち着いた口調で、あたしを諭した。
あたしは我に返る。
あーそうね、こりゃ判らんねー、あたしやっちまった、つい久しぶりに白昼夢見て、感情引っ張られたー。
あーあ美由紀ちゃんの視線痛い、いたた。
「ソータこわいー」ソータそんな責めんでくれ、マジごめん。穴があったら埋まりたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます