白昼夢

美由紀であるあたしは、呼吸を整え気持ちを整えようと努めている。

内から溢れてくる恐怖を抑えこむのではなく、観察している。

それでも目の前の空間がチカチカと輝く様に怯えている美由紀の気持ちが伝わってくる。


白頭巾の4人が、あたしを囲む。

あたしは知らない人たちだけど、あたしがなりきっている美由紀とは親しい人たちのようだ。

美由紀が恐怖と対峙できるのは、この怪しい人たちを信頼しているから。

そんな美由紀の思いが、あたしに流れこんでくる。


それはチカチカと輝く空間を裂いて、やって来た。


全身、燻んだ白い皮膚。

頬は胸辺りまで垂れ下がっている。

その両頬の間には鼻のような2つの孔があり、その直ぐ下から胸辺りまで縦一直線に切れ目がある。

鼻のような孔から上は狭く、目のような2つの空洞には眼球らしきものが見当たらない。

首はなく頭と身体が直接繋がっていて、肩から長い腕が2つ伸びた人型をしている。

腕の先は4本の鉤爪、2本の足は腕と同じく長いが、足先に指や爪はなく平べったく潰れて丸くなってる。

白頭巾の人たちより、一回り、若しくは二回り大きい。


あたしの、美由紀の、視線は自分の手元に移る。

少女には不釣り合いな短剣が握られている、刀身に刻まれた印は...

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