協会
協会は歴史の中で変質していき、創設当時の姿は失われてしまった。
総裁就任前には組織内の派閥闘争、権力者からの弾圧、分裂や吸収、消滅や再建の繰り返しなど、協会は混乱していた。
しかしチャールズ総裁が就任してからの協会は『外側の神々の秘匿』という目的の下、統制を保ち安定している。
ヴィクトリア朝初期、総裁に就任したチャールズ・オーガスト・フォードは、当に生きる伝説であり、歴史上の如何なる偉人や英雄が霞むほどの人類史上最高の人間なのだ。
200年以上、生きている人間など他には誰もいないのだから。
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わたしたちが秘匿する外側の神とは、有史以前に外宇宙から地球に飛来した旧支配者たちを含む『外宇宙の超越的存在』のことをいう。
旧支配者たちは今、人類では窺い知ることも叶わない理由により休眠期に入っている。
旧支配者たちは人類が誕生する以前にもそうしたように、休眠期から覚めた暁には破壊と殺戮の神となり再び地球を支配する。
また外宇宙には旧支配者たちより更に強力な神々が存在していて、奇跡的な確率でその圧倒的な存在に遭遇してしまった人類がいない訳ではない。
それを知り得る者は、旧支配者を畏怖する余り信仰の対象とするか、またはその脅威から人類を守護しようと無謀な企てに狂奔するかに概ね分かれている。
このような禁断の知識の保有者たちは、自分たちの活動の妨げになるとして、これらの真実が世に知れ渡ることを危惧している。
協会が今日まで継続して発展できたのは、協会の目的が、禁断の知識を有する両陣営ともに支持されているからなのだ。
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わたしは外側の神々について、詳しく知ることを禁じられている。
理由はわたしの能力『見鬼』にある。
見鬼は『人ならざる不可視の存在』を可視化できる能力者である。
『見える』ということと、『見る』ということは違う。
わたしの場合、見鬼の能力で見ようとしてはいけないのだ、見えなくてはならない。
事前に人ならざる超常的な存在の情報を入れてしまうと、不可視の存在を可視化したときに、その情報がバイアスとなり『見えたことを、自分勝手に見てしまう』という具合に能力を歪めてしまうのだ。
わたしにとってこの能力は生まれながらの体質で、協会に拾われてからは能力に振り回されない術も体得している。
それまでは『不可視の人ならざるもの』を突然見てしまったり、または取り憑かれ見続けてしまったりと悩まされていた。
協会員になってからは、見える前に悪寒や霊気を感じ取り判断できるようになったので、心構えをもって『不可視の人ならざるもの』と対峙できるようになったし、必要がなければ避けて見ないようにもできる。
見鬼は、余計な雑念や先入観が命取りになる場合だってある。見鬼に必要なのは肌感や直感に素直に従う感性であり、知識はそれを損なう恐れがあるのだ。
しかし、それは全てわたしが未熟なゆえだ。見鬼の達人になれば、知識や雑念を制して見えるようになるという。
わたしは見えるだけで、経験も所作も技術も足りていない。
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協会の最高意思決定機関である議会に参加可能な者を参議と呼ぶ、参議は現在8名であり協会の全体像を把握することが叶う唯一の役職だ。
参議の任命権は総裁の権能である。
議会の下、各セクションのリーダーには独自の裁量権が保証されている。
ミッションによっては、セクション同士連帯して協力し合うこともあるが、希だ。
リーダーは多くの場合、自分の権力が制限されることを嫌い連帯を望まない。
議会もリーダーのモチベーションに配慮して、連帯を指示することをしないくらいだ。
わたしが所属するチームのリーダーは、アリッサ・オードリー 上杉。
彼女は総裁の養女であり、総裁は将来有望な子どもの中から、選りすぐりの者だけを養子にしている。
アリッサはわたしの憧れであり尊敬する女性だ、彼女の期待を裏切ったり、仕事の邪魔をしたくない。
アリッサのチームは、北条誉チーフ、中島恭平サブリーダー、小暮雄高さん、舎人史恵さん、比留間竜さんと榎本塔子さんと、わたしを含めて8名だ。
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