第129話 戦争介入 7
浜辺に現れたみんなは、まるで下着姿のような格好をしていた。
(えっ?えっ?こんな格好で大丈夫なの?)
そう心配しながらもみんなの姿に目を奪われていると、先頭を歩いていたメグが手を振ってきた。
「お待たせダリア!どう?似合ってる?」
メグは胸を反らすようにポーズを取って、僕に水着を見せつけてくるが、その格好はあまりにも扇情的だ。おそらく海で遊ぶ際にはこの格好が普通なのだろう。彼女の表情からは恥ずかしさといったものは感じられず、むしろ当然だというような態度だった。
薄い緑色のグラデーションをしたビキニと言うらしい水着は、彼女のプロポーションを一層際立たせているように見えた。豊満な胸や、くびれた腰、丸みのあるお尻と、とにかく肌色が多い格好でなかなか直視しずらい。
「と、とても良く似合っているよ!白い肌に緑が映えていて、とても素敵だね!」
「ふふふ、ありがとう!みんなのも見てあげて!」
そう言うと、メグの背後に隠れぎみだったみんなが、おずおずと僕の前に出てきた。
「ど、どうでしょうか?私、こういった服?を着るのは初めてで・・・似合いますか?」
フリージアは、純白のビキニで、腰にはヒラヒラのパレオという物を巻いていた。こちらもメグに負けず劣らずのプロポーションだった。普段は服で隠れていた胸は、実は結構大きかったようだ。
「と、とても綺麗ですね!白の水着は清楚なフリージアのイメージにピッタリで、可愛さが際立っているよ!」
「せ、清楚ですか//////?あ、ありがとうございます!そう言ってもらって、とても嬉しいです!」
「ダリア樣!私はどうでしょうか?」
シャーロットは、艶のある黒い水着で上下が一体となっていた。彼女はスレンダーでスタイルが良く、着ている水着はその身体のラインを際立たせているようだった。
「とても素敵ですよ!黒い水着がシャーロットの綺麗な金髪を、いつも以上に良く見せてくれています」
「まぁ・・・、ありがとうございます!」
「ダ、ダリア君・・・。わ、私はどうかな・・・?」
最後にもじもじとしながら現れたのはシルヴィアだ。彼女はピンクのビキニで、可愛らしくたくさんのフリルがあしらわれているようだ。ようだというのは、僕から見えないように前屈みになりながら、腕で胸元を隠すような姿勢だったので水着がよく見えなかったからだ。
「シルヴィアさん、それではよく見えませんよ?」
シルヴィアの背後から、メグが優しく彼女の肩に手を置きながら
「ど、どうかな?」
他の女の子と比べても格段に大きい彼女の胸は、水着で強調されることで更に存在感を増していた。しかも、恥ずかしがって前屈みの姿勢になっていることで、胸の谷間がダイレクトに視界に入ってきてしまう。その様子に、むしろ水着が支えきれていないのではないかと思うほどの迫力だった。
「・・・・・・」
「あ、あの?ダリア君?」
「あっ、ゴ、ゴメン!その、凄く似合っていて・・・可愛いです!」
「あ、ありがとう//////」
シルヴィアの水着姿の迫力に思わず言葉を失っていたが、彼女の言葉で我に返り、なんとか言葉を絞り出した。
「・・・ダリア君は大きな胸の子が好みなんですか?」
そんな僕とシルヴィアの様子に、フリージアがジト目を向けてきた。
「え?いや、そう言うわけではないと思うんだけど、なんだか凄いなって思って・・・」
「ダリア、そう言うのは見惚れてたって言うんですよ!」
少し膨れっ面をしたメグにそう言われてしまった。どうやら2人とも機嫌が傾いてしまったようだ。その反面、シルヴィアは頬を上気させて顔をうつ向かせていたが、その表情は眩しいくらいの笑顔だった。
(女の子って難しい・・・。セバスさんは色々経験していそうだし、勉強させてもらえないかな・・・)
僕が困った顔をしていると、シャーロットが笑顔で入り込んできた。
「ダリア様も引き締まった肉体がとても美しいですわ!まるで神が作った造形物のようです!」
「あ、ありがとう、シャーロット」
彼女は僕の水着ではなく、肉体を褒め称えてきた。以前から感じているのだが、彼女は僕のことを神聖視し過ぎているような気がしてならない。そんな彼女の言葉に、フリージアがじっと僕の身体を見て呟く。
「・・・確かに。可愛らしい服を着ればまるで女の子のようなのに、この肉体を見ると凛々しい男性・・・これこそ、これこそ真の『男の娘』なのですね!」
恍惚とした表情は、いつも僕に最先端と言って女の子のような服を着させているフリージアのそれだった。
「あの、フリージアさん。『男の子』ってなんですか?」
理解できない言葉のニュアンスだったのか、シルヴィアがフリージアにおずおずと質問をしていた。
「よくぞ聞いてくれました!実は私の愛読書にあるんですが、男の娘とはーーー」
そこからは長々としたフリージアの独演会が始まってしまった。しかも、その話に興味を持ったシャーロットまでもが興味深げに聞いていて、元々本を借りてまでいるメグも当然の様にその会話の中に入っていた。みんなは時々頬を赤く染めて「きゃー!」とか、「それは素晴らしいです!」とか、「是非みんなで見ましょう!」と言う声が聞こえてきていた。僕はあまり関わらないようにして、一人海の方へと入っていった。
初めて触れる海の水は少しだけ冷たく感じた。遠くまで見渡せば、そこはコバルトブルーに輝く美しい光景だった。目を凝らすと、小魚の群れが泳いでいるのも見える。ここはまさに心癒される楽園のような場所だった。
(戦争を止めるとか、どう行動すべきだとか、今は何も考えずにこの場所を満喫したいな・・・)
海に身体を浮かべながら、ぼ~っとそんなことを考えていると、浜辺の方からみんなが駆け寄ってきた。メグとフリージアは、ポヨンポヨンと胸が弾んでいたが、その隣にいるシルヴィアのダイナミックな胸の動きに思わず目を奪われ、凝視してしまった。そんな自分が恥ずかしくて、みんなから目を逸らした。
「ダリア君、一人で先に行かないでよ~!」
「今日は気分転換です!目一杯遊びましょう!」
「ダリア君?遊び終ったら、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど?」
フリージアだけはちょっと違う方向性だったが、今は一先ず全てを忘れて、みんなと海を満喫するのだった。
それからしばらくみんなと遊んでいると、屋敷のメイドさんが荷物をたくさん持ってきた。テーブルを広げ、飲み物やフルーツを置き、その傍らでは土魔法で
「みなさん、お腹が空きましたらご自由にお召し上がりください!」
メイドさんが遊んでいる僕達に声をかけてくれた。良い匂いにつられた僕達は竈の周りに集まり、美味しい昼食に舌鼓を打った。味付けはシンプルな塩コショウのみなのだが、いつもより美味しく感じられた。それはみんなでわいわいしながら食べる、この雰囲気が良かったからなのかもしれない。
昼食を終えて、また海でしばらく遊ぶと、さすがに疲れてきたのか、みんなぐったりしながら浜辺にあるメイドさんが設置してくれた椅子に仰向けになって寝そべっていた。
「さすがに疲れました~」
「ちょっと遊び過ぎてしまいましたね・・・」
口々に疲れを溢しているみんなの姿を見て、僕は一つ試してみようと考えた。
(そう言えば師匠の日記に、【時空間】の才能の使い方で、自分以外の場合は視界に入っている対象であれば【速度】を変えられるって書いてあったっけ。みんなの『回復速度』も上げられるのかな?)
そう考えた僕は、みんなを視界に収めて、意識的に回復速度を上げるように集中した。すると、5分程でみんなに変化が現れたようだ。
「・・・あれ?あんなに疲れていたのに、もう疲れが無い?」
「わ、私もです!」
「変ですわね、さすがにあの疲労感がこんなにすぐに無くなるなんて・・・」
「・・・もしかして・・・ダリア?」
フリージアが最初に異変に気づき、それに続くようにシルヴィア、シャーロットも疲れが取れていることに気づいた。メグはその元凶である僕を見ながら聞いてきた。
「あ、良かった!疲れが取れたんだね!僕がみんなの回復速度を上げてみたんだけど、どうかな?」
「と言われても、特に気づくことは無かったんですが・・・」
「気がついたら疲れが消えていました!」
「こんなことが出来るなんて、さすがダリア樣ですわ!」
みんな自分の身体に驚いているようで、少し身体を動かしたり触ったりしていた。ただ、メグはこの力に別の可能性を見ていたようだ。
「ダリア、もしかしてその能力で私たちの『老化速度』を遅らせることは出来るんですか?」
そのメグの言葉に、みんなが一斉に僕を見つめてきた。
「たぶん出来ると思うけど、この能力は僕の視界に入っていないと使えないし、遅くすることは出来ても、止めることは出来ないから・・・」
永遠に一緒に居られる訳じゃないという言葉を僕は飲み込んだ。しかし、メグ達の反応は違った。
「それでも、少しでも長く一緒に居られるなら、私達と居る時にはそうしてくれませんか?」
「例えダリア君より先に居なくなってしまうとしても、その時間が少しでも長い方が良いな!」
「私もダリア樣と一緒の世界を見ていきたいですわ!」
「お願いできますか?ダリア?」
みんなの真摯な視線に即答しそうになるが、一つ確認しなければならない。
「でもそれは、周りの人達からは不自然な存在に見られるっていうことだよ?それでもいいの?」
「もちろんです!そんなこと気にしません!」
「だって、もっと大切な事がそこにはあるもん!」
「当然ですわ!」
「元より私はエルフですしね!」
僕の問いにみんな一切の迷い無く答えた。これほどみんなから想われているなんて本当に嬉しかった。
「分かった。それじゃあ、これからは可能な限りそうするよ!」
そうして、僕はこれからみんなの『老化速度』を遅くすることを約束した。今は視界に入らないといけないが、空間認識で認識した対象に出来るならもっと効率が良いと思うので、今後は試行錯誤と鍛練をしようと考えた。また、【速度】を早くすることは慣れていて得意なのだが、遅くするのは慣れていないので、それにも鍛練の必要性があった。
そして疲れが回復したみんなとまた遊び、陽も沈みかけてきた頃、屋敷へと戻ったのだった。
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