第二章 冒険者生活 編
第11話 冒険者生活 1
3年間暮らした森から出て師匠から貰った地図を頼りに王都へと旅を進める。地図から考えると王都までは馬車で10日程の旅になる。走った方が速く着くけど、その速度が人目に付くと厄介だと考えて、街道から少し逸れた林の中をひた走る。
(この調子なら明日には王都に着きそうだ)
辺りが暗くなってきたところで休憩をしながら地図を確認していると、今までの移動速度から考えて、ここで夜営をしても明日の昼前には到着できそうだった。
「今から移動して夜中に着いてもしょうがない」
街道から少しはなれた邪魔にならない林の中で夜営をする。食事をしようと焚き火をしてファング・ボアの肉が焼き上がるのを待っていると、少し離れた所からこちらを監視している視線を感じる。
(街の近くには野盗がいるから、夜営は気を付けろって言ってたな・・・人数は10人位か)
野盗は犯罪歴があるため基本的に街の中に入ることが出来ない。正確には衛兵に捕まってしまうので街から少し離れた所に住むしかないと言うことだ。
気配は察知したものの、本当に野盗かどうかは分からなかったので、襲撃されれば返り討ちにしようと考え、焼き上げた肉を食べながら様子を見ていた。すると、僕を監視していた者達がわらわらと近付いてきた。
「「「おいガキ!おとなしくしろ!」」」
「・・・なんですか?」
相手は刃こぼれしている剣を向けながら、ボロい服に身を包み無精髭を生やしたおっさん達だった。
「なんですかじゃねぇだろ!こんな所でガキが一人でいるんだ、奴隷として売られても文句は言えねぇだろ!・・・お前なかなか高く売れそうな顔してるな!ん?女と思ったら男じゃねぇか・・・ヒヒッ、売る前に楽しんどくか!!」
(何を楽しむか分からないけど・・・気持ちわるっ!!!)
嫌悪感が酷かったので相手から情報を聞こうという考えがどこかに消えてしまって、身体が先に動いた。
「〈
「「「ごっ!!」」」
相手に触りたくもなかったので第三位階風魔法の〈
(う~ん、別に命に危険を感じるわけではないけど、今後ともあんな奴らに絡まれるのは気持ちが悪いな・・・今後は街の中の宿屋に泊まることにしよう)
そんな小さなハプニングはあったが、その後は特に何もなく夜は更けていった。そして翌朝から王都に向けて足早に移動しているとようやく外壁が見えてきた。
「あれがオーガンド王国の王都エキノプスか・・・でっかいな!」
王都からまだ少し離れている丘から見下ろすと4つの外壁が同心円状にそびえ立っている。中央には王城があり、王族の家系の者しか住むことが許されないらしい。外側になるにつれて侯爵・伯爵・子爵が、更に外側は男爵・騎士爵や商会の富豪が、そして一番外側の外壁で囲まれた場所には平民が住んでいるらしい。
近付いて外壁を見上げるとその大きさが実感できる。さすがは王都と言える。これなら生半可な魔獣が襲ってきたとしても問題無いだろう。しばらく口を開けながら見上げていると、近くに居た人の良さそうな門番が話し掛けてきた。
「君っ、王都へ何か用かな?ご両親はどうした?」
(おっと、こういう時はちゃんと目上の人に対する言葉遣いをしないと・・・)
「こんにちは門番のお兄さん!実は僕の家の
「へぇ武官の家系なのかな?
「はい、どうぞ」
「えぇと、ダリア・タンジー君か。犯罪歴もないし問題ないね。王都について説明はいるかい?」
「はい!お願いします!」
説明を聞くために場所を移して門番の控え室のような所へと連れてきてもらった。ざっくりと説明してもらった内容は、平民区画へはプレートの確認だけで入れるが、平民が貴族区画へ入るにはプレートと銀貨一枚の税金が必要だから気を付けろと言われた。
また、冒険者協会の近くは平民の中でも比較的富裕層が暮らす場所にあり、治安も良いので高いがその分設備もしっかりしているので、宿を取るならその周辺がお勧めだとも教えてくれた。
また、冒険者になるならと言うことで、金ランク未満の者が帯剣する場合は布で巻いておいたり、何かに入れておくなどして、すぐに抜刀出来ないようにする必要があるとのことだった。それをしていない場合、罰金として金貨一枚を納めないといけない。さらに冒険者同士の争いに衛兵は基本的に介入しないが、周りに被害が及んだり、相手を殺してしまった場合は事情を聞き、最悪犯罪奴隷とされるらしい。それから僕にとっては最も重要な事だと言われ真剣な顔で言われたのがーーー
「いいかい、君は男の子だけど小柄で可愛い顔をしている。低ランクの粗野な冒険者や野盗の中には、そういうのを好む輩も多いと聞く。十分気を付けるんだよ!」
男なのに男が良いというのがよく理解できなかったが、昨日の野盗のような奴の事を言っているのだろうとなんとなく分かった。
「・・・その、襲われて返り討ちにしたら罪に問われますか?」
「ははは、凄い自信だな!さすがに殺してしまうのはダメだよ!しかし、逆に言えば殺さなければ大抵お咎め無しとなるのが冒険者同士の争いなんだ。騙されたとしてもそれは自分が愚かだったと周りから笑われるだけだ。だから冒険者になるなら気を付けるんだよ!」
「はい!色々教えてくれてありがとうございます!」
「ああ、では気を付けてな!」
説明に結構な時間を使ってしまったのでもうすぐ太陽も真上に来る時間になってしまっていた。平民区画の街並みは外壁の門から続く大通りは綺麗で店も多くの活気のある雰囲気なのだが、少し路地裏を見ると、ボロボロの小屋が建ち並ぶ貧民街の様相を呈していた。
冒険者協会は貴族区画を隔てる内壁付近にあるため外壁からは少し遠い。辺りを見回しながら歩いていると30分でようやくその建物が見えてきた。そこは二階建ての大きな建物で、看板には3つの剣が交差するシンボルマーク様なものが目を引く。奥には訓練場のような広場も見える。
これから始まる冒険者生活に少しの緊張と興奮を抱きながらその扉を開いた。
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