第8話 サバイバル生活 3
サバイバルが始まって半年が経った。当初は生きるため、生活環境を整えるためにあちこち
また、将来街や都市へ行く時にお金に困らないように師匠から教わった高価な素材を集めて収納していった。この辺りの森ではオーガを狩るのが効率が良く、その角は高価な薬になるらしく、その外皮は魔法の威力を
「さて、今日もオーガで鍛練するか!」
その日、朝食を食べ終えていつものように鍛練するため使い魔のフォレスト・ウルフにオーガを索敵させてその後をついていく。
しばらく森を進むと遠くから戦闘音らしき音が聞こえてきた。
「・・・誰か戦っている?こんな森の奥で一体誰が??」
相手に見つからないように慎重に歩みを進めて、50m程手前の茂みから様子を
前衛の5人は連携を取りつつ、2人がオーガの注意を引いて、残り3人が攻撃しているが、それもオーガの持つ鉄棒に防がれていて防御を突破できていなかった。後方支援の魔法師は火や風魔法で攻撃を加えているようだが、本来オーガは種族的に魔法が効きづらい為あの魔法師の力量では目眩まし程度にしかならず、あまり効果が見られなかった。
「前衛は体格の良い一人を除いてオーガより格下で、逆に実力者の足を引っ張っている。あの小柄な魔法師は・・・論外だな。まぁオーガ・ジェネラル相手だと普通はこうなるのか・・・」
オーガ・ジェネラルはオーガの上位種で赤い角が特徴だ。戦闘力は通常種の3倍~5倍の違いがある。また各魔獣の上位種はその心臓に魔力の塊である魔石がある事が多く、それは魔剣やエリクサーの素材になるらしい。
「魔石はかなり高額で取引されてるらしいし、まだ取ったことのない素材だから欲しいな・・・」
そんな事を考えながら戦闘を見ていると、やはり前衛の内4人は相対しているオーガよりも力も早さも技もない。後方支援の魔法師は第三位階まで使えるようだが、制御が甘く威力が出ていない。光魔法も使えるようなので、これなら回復に専念した方がましなほどだ。
ただ、師匠から勉学を教えてもらっていた時に、僕の戦闘力は『一般人から見れば例外的な力を持っていることを忘れるな』と言われたことがある。自分で考えても、6属性全ての魔法が第五位階まで使えるなんて聞いたことは無かった。
その為師匠から、『名を成したいなら力を
(状況は拮抗しているが、すぐに崩れそうだ。あと2、3合の打ち合いであの騎士達はやられるな・・・さて、どうしよう?)
騎士達に加勢すれば僕一人でもオーガ・ジェネラルの討伐は可能だろう。しかしその場合騎士達がどういう行動に出てくるか分からない。敵とみなされる事は無いにしても、例外的な力を持つ僕にどんな反応をするのかが分からない不安がある。
そんな葛藤をしている内にも一人の騎士が体勢を崩し、そこにオーガ・ジェネラルが襲い掛かる。それを体格の良い騎士が助けに入るが、態勢が悪かったのかオーガの攻撃を受け止めきれずに吹き飛ばされ、木の幹に激しく体を打ち据えてしまっていた。
(人が死ぬところは見たいとは思わないし、どうせ今後は会うことも無い人達だろう・・・)
オーガ・ジェネラルが今が好機と見たのか、一番強い騎士が吹き飛ばされた衝撃で立ち上がれずにいるところに、その巨体からは想像できないような速さで接近し、その勢いのまま鉄棒を振り下ろし
その刹那、踏み込みの速度を最大に上げて巨体のオーガの
取り敢えず敵ではないことをアピールするため吹っ飛んだオーガを見据えながら声を掛けた。
「加勢する!」
◆
side ????
私の近衛騎士団長が
「む、無理だ!逃げろ!!」
あの子が多少強くても相手はあのオーガ・ジェネラル。私の近衛騎士団5人で歯が立たなかった相手に人間の子供ごときが立ち向かうなど自殺行為に等しい。しかしその子は私達に向かってあろうことか自信ありげにこんな事を言ってのけたーーー
◇
僕がオーガを吹き飛ばすと、後方にいた緑色の髪をした魔法師の子が慌てたように『逃げろ』と叫んできた。当然そんな心配はいらないのでーーー
「大丈夫です!あなた達は下がっていてください!」
僕の言葉にその子と騎士達は驚きと戸惑いのような気配もあったが、構わずオーガに追撃を行う。ただ相手も上位種だけあって既に体勢を整え、鉄棒をこちらに構えていた。
先に僕が動きだし、オーガが視認出来るだろう速度で接近する。当然相手は僕を迎撃するため鋭く鉄棒を振り下ろすが、反射速度も上げているので身体を回転させ攻撃の射線上から身を
「
「
オーガの肉体に肘まで入ったところで指先に硬い物が触れる感触があった。
(あった!多分これが魔石だ!)
魔石と思われるそれを周りの肉ごと引きずり出し、引き抜いた瞬間にオーガから距離を取るとその直後に僕の居た場所に拳が降ってきていた。そしてオーガはそのまま前のめりに倒れこんで動かなくなった。
倒したことを確認してから自分の手を見ると、ピクピクと動いている心臓から真っ赤な血が
(うげっ、気持ちわるっ!)
周りから見えないように注意して魔石を取り出し収納すると、残った心臓はその場に投げ捨てた。
手に着いている血を振り落としながら、オーガに吹き飛ばされていた騎士が未だに地面に座り込んで苦しそうにしていたので、無事を確認しようと近づいて行った。
「えっと・・・大丈夫ですか?」
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