第5話 ペンギンと私の数年後
あれから数年後、私たちは結婚した。
私たち夫婦は世界初のペンギンと人間のカップルとなった。この結婚でペンギンの彼が身内から浴びたのは祝福のみだが、人間である私の場合は驚きの声も多かった。
まあ、そうなる。
しかし親戚の結婚おばさんがひっくり返ったときは大爆笑した。会う度に結婚をすすめてくる彼女には辟易していたので、これでスッキリ。祝ってくれたし、もう全く恨んでいない。
「僕が養います! 稼ぎます!」
結婚前、彼はキリッと宣言した。今、彼はエンターテイナーとして活躍している。どんな仕事も毎回かわいく丁寧にこなすので、オファーは止まらない。水族館、動物園、サーカス、TVなどなど。キュート且つ器用な彼は人気者だ。
ペンギンに養ってもらう人間なんて私ぐらいだよな……と思っていたけれど。
「ペンギンのご主人との結婚生活、いかがですかっ?」
「そうですねー……」
実は私にも仕事が舞い込んでくる。人間初のペンギン夫人となった私は、なかなかの有名人と化した。インタビューやエッセイなど、色々なことをしている。
「はー……夢みたいだ」
「何が?」
家の中で私が呟くと、すぐに彼は反応した。
「私が良い暮らしをしているなんてね」
「当然ですよ。渚ちゃんみたいな優しい人が幸せになるのは」
「あなたのおかげだよ」
あのとき彼と出会わなかったら、彼が私を好きになってくれなかったら……こんな楽しい生活は訪れなかっただろう。
「ありがとう」
立っていた私は屈んで、彼の頭を撫でた。すると彼は目を細めながら、私の頬に優しく嘴を付けた。
「……ふふ」
「えへへ」
私たちは笑い合った。
「さて、そろそろ行こうか」
「はいっ」
立ち上がって歩き出す私の隣には、かわいらしくてステキな旦那様。
今からお寿司を食べに行く。
ペンギンエボリューション 卯野ましろ @unm46
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