第79話 ミサイルを阻止しないと

 居ても立ってもいられなくなったあたしは、博士が止めるのも聞かないで部屋を抜け出した。いくら、糸魚川君が超人でも、あんなミサイルで狙われたら助からない。

 なんとか、ミサイルを阻止しないと。


「どうやって?」


 通路を歩きながらリアルの発した質問に、あたしは答えられなかった。

 いや、部屋を抜けだしたのはいいけど、なにも対策ないのよね。


「だと思った。とにかく、信号弾を探そう」

「そんなもの、どうするの?」

「スティンガーミサイルは熱線誘導式だ。つまり熱い物を追いかける。信号弾で偽の熱源を作って、ミサイルの狙いを逸らすんだ」

「わかった」


 しばらく通路を歩いて、倉庫らしき部屋を見つけた。

 部屋の中には、木箱やダンボールが乱雑に置いてある。リアルの話では、信号弾は船ならたいてい積んであるというけど……

 発煙筒を見つけたけど、これじゃだめよね。


「あったぞ」


 リアルが口で示した木箱に「Signal bullet」と書いてあった。

 蓋を開けると、金属の筒が数本。

 ピストルみたいな形のと、ただの円筒と二種類あるけど……


「ヘイ!! ユー!!」


 やば!! 入り口に女の人が。


 あの人って昨日あたしにピストルを突きつけた人。たしかリンダとかいったっけ。

 リンダがこっちへやってくる。


「フギャー!!」


 リアルがリンダに飛びかかるる。

 頭にしがみついて、ひっかいたり、猫パンチを浴びせたりするリアルを、リンダは必死で引っ剥がそうとする。


「リアル!! そいつから離れて!!」


 リアルが飛び退いた瞬間、あたしは発煙筒を点火してリンダの顔面に突きつけた。

 発煙筒の煙をもろに吸い込んで、リンダは激しく咽せる。

 その隙に、あたしは箱から信号弾を掴んで倉庫から逃げ出した。

 どこをどう走ったのかわからないけど、あたしとリアルは後部甲板に出た。


 ラッキー!!  ミサイルを持っている人の真後ろだ。


 モーターグライダーのエンジン音が聞こえてきた。ようし、あいつがミサイルを撃つのに合わせて……


「おい、瑠璃華。おまえ何拾ってきた!?」

「え? 何って信号弾」

「それ信号弾じゃない」

「ええ!?」


 もう糸魚川君来ちゃうよ。


 ああん!! どうしよう!!


「まて、瑠璃華。これ使える」

「え?」

「説明している暇はない。そいつで、射手の頭上を狙って撃て」


 よくわからないけど、あたしはリアルの言う通り金属筒をミサイル射手の頭上に向けた。

 スイッチを押すと、何かが筒から飛び出す。それは空中で広がって網になった。


 これって!?


「俺を捕まえるのに使ったネットランチャーの残りを、信号弾の箱に入れてあったんだな」

「オオ!! ノー!!」


 網に絡まれた射手がじたばたしている。

 モーターグライダーが現れたのはその時。

 モーターグライダーは一度前部甲板の上を通り過ぎ、反転して戻ってきた。

 後部飛行甲板の上で糸魚川君はグライダーから飛び降りる。

 空中で二回転してから甲板に着地。


 か……かっこいい!! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る