第78話 深夜の空中戦

 リアルは再びパソコンにケーブルをつないだ。パソコン画面に夜の海原が映る。

 てか、サムもこれができたんだ。


「あんた達、互いの見てる事を見れるわけ?」

「内調で導入が決まったときに、相互リンクできるようにしてくれって言われたのでね」


 リアルに代わって博士が答える。

 画面に黒い船が現れた。

 今、あたし達が乗っている船だと思うけど、月も星もない夜だというのに、なんではっきり見えるんだろう? 

 聞いてみたら、単に鳥用の暗視ゴーグルだって。科研ってなんでもあるのね。

 やがて、サムはマストの上に止まった。

 甲板を見下ろす。

 船首方向の甲板には人気はなかった。

 映像が船尾の方に変わる。

 甲板にヘリコプターが止まっていた。

 その周囲で人が慌ただしく動き回っている。ヘリの発進準備をしているみたいだけど。


「ねえ、モーターグライダーってレーダーに映るの?」

「そりゃあ、ステルスじゃないし」

「じゃあ、見つかったんじゃないかな? あのヘリで糸魚川君を撃ち落とす気じゃ?」

「そうだった!!」


 リアルは押し黙った。

 サムと連絡を取ってるんだ。

 そうしている間にヘリが飛び立つ。

 映像が動き出した。

 サムがヘリを追って飛び立ったんだ。

 程なくして、映像にノイズが走り、やがて映らなくなる。電波が届かなくなったんだ。  

 窓の外に目を移すと一面の闇が広がっていた。この闇の向こうに糸魚川君がいるのね。

 数分後、夜空に閃光が走る。

 どっちかがやられたんだ。

 結果がわかったのは、サムが戻って映像が回復してからだった。 

 ヘリの乗員が入口から闇に向けて銃撃しているのが見える。

 不意に闇からモーターグライダーが現れヘリを掠めるように飛び去った。

 その直後に、ヘリのテイルローターが火に包まれる。乗員達がパラシュートで脱出する姿が見えた。

 サムは再びマストに泊まって甲板の様子を見せてくれた。

 ヘリが落とされたせいか、甲板が再び慌ただしくなっている。

 何人かがライフルを夜空に向けてた。


「大丈夫かな?」 

「まあ、ライフルぐらいなら」

「そうも言ってられないわ」


 博士が画面の一カ所を指さした。

 細長い金属筒を持っている人がいる。


「スティンガーミサイルよ」

「なんですか? それ」

「熱線誘導式の携帯用地帯空ミサイル。モーターグライダーなんてひとたまりもないわ」

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