第50話 顔認証システム

 リアルを見つけたのはそれから二十分後。

 しばらく探し回って、駐輪場に戻ったときだった。


「にゃあ!!」


 猫の声の方を見ると、自転車と自転車の間の狭い通路をリアルが猛スピードでこっちへ駆けてくるのが目に入った。


「リアル」


 あたしはリアルを抱き上げた。


「瑠璃華!! どこに行ってた!? 探したぞ」

「なによ!! こっちだって探してたんだから」

「今はそれどころじゃない。緊急事態だ。パソコン出してくれ」

「え?」


 あたしは、人気の無いところでリュックからノートパソコンを出して立ち上げた。

 ネットにつながるのを待っている間に、リアルの首輪メモリーを接続する。


「俺の首輪を直接ネットにつなげれば楽なんだが」


 ネットにつながると、リアルはキーボードを叩きはじめた。

 でも、やっぱり猫の手じゃ遅い。

 それにマウスは使えないから、あたしが代わりにリアルの指示で操作していた。


「何をしているの?」

「海外のサーバーを経由しているんだ」

「そんなことしてどこにつなげるつもり?」

「内調のコンピューター」

「ええ!? 大丈夫なの?」

「だから、海外サーバーを経由しているんだよ。お! つながった」


 画面にはさっきの変態男と一緒にいた外人の男。


「変装しているみたいだが、内調の顔認証システムを使えば」


 別の男の写真が出てきた。

 二つの写真が重なり『同一人物の可能性九十九パーセント』と表示される。


「やはりこいつか」

「誰なの?」

「テロリストだよ」

「ええ!?」

「環境テロリスト・シーガーディアンって言ったら聞いたことあるか?」

「知ってるよ。パパが取材に行っていた」


 リアルはパソコンの画面を指さす。


「こいつはシーガーディアンのリーダー、ポール・ニクソンだ」

「うそ!! なんでこんなところに……」

「たぶん、南氷洋で逮捕された仲間の奪還と、俺への個人的復讐」

「個人的復讐? 何か恨まれるような事でも……まさか? パパが前に言ってたポール・ニクソンのカツラをはぎ取った猫って?」

「そう。俺だよ」

「じゃあ、シーディアンの船を沈めたシャチというのも……」

「俺達の仲間さ」

「それが、リアルのやってた任務なの?」

「この事は話したくなかった。だが、言わないと瑠璃華は逃げないと思ったからな」

「逃げるって? どういう事」

「あいつら、この建物に爆弾を仕掛けていた」

「爆弾!? なんのために」

「ここの客を人質に取って、南氷洋で逮捕された仲間を釈放させようという魂胆だ。テロリストがよく使う手さ。普通は飛行機をハイジャックしてやるんだが、奴ら空港のセキュリティを突破するだけのスキルがないからな」

「だからって、ここを狙わなくても」


 チュドーン!!


 え!? もう爆発?

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