第12話 またたびさんの猫ブログ

「え? いや、悪いよ。俺は元気になったら出ていくから」

「ダメよ。ここから出てどうすんの?」

「いや、とりあえず状況が変わるまではどっかに隠れてるから」

「そのどっかが、ここじゃダメなの?」

「いや、それじゃ瑠璃華に迷惑だし」

「迷惑じゃない」

「でも、俺には追手が」

「そんな簡単に見つかるの?」

「ええっと……いや、相手は諜報機関だから人間を探すのはお手の物……あれ?」

「猫を探すのは?」

「猫を探すノーハウはなかったかも……」

「ならいいじゃない」

「いや……しかし」

「それに、隠れるならこの辺りは本当にいいわよ」

「どうして?」


 あたしはノートパソコンを操作して猫ブログを出してリアルに見せた。

 この近所に住んでるらしい、HN『またたびさん』という人が作ったサイトで、この町内に住む地域猫数十匹の写真が載っていた。


「この町内だけで五十匹以上の地域猫がいるのよ」

「木を隠すには森の中ってわけか?」

「そうよ」

「ところでさ、こんなサイトをお気に入りに入れてるって事は、瑠璃華ってよっぽど猫好きなんだな」

「もちろん」

「まさか俺をペットにしたくて、引き留めてるんじゃないだろうな?」


 ギク! 実はそうだったんだが……


「そ……そんな事ないわよ」

「じゃあ、なぜ目をそらす?」

「そらしてないもん! ちょっと窓の外が気になっただけよ」

「まあ、どのみち俺はしばらく世話になるけどさ、安易な気持ちで俺を引き留めたりしたら、本当に後悔することになるからな」

「はいはい」


 大げさな。どうせ、見つかりっこないって。

 と、その時、あたしは安易に考えていた。

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