人間は素手で羆に勝てるのか?――これは有史以来人類が抱え続けてきたテーマであり、本作もそうした問いかけに答えようとした作品の一つである。
一人の若き空手家が、とある村に出没する羆の討伐をメスガキに依頼されるという本筋自体はいたって普通の内容なのだが、この本筋を普通と言っちゃうぐらいそれ以外の部分がどうかしているのだ。
最初から人が盛大に死ぬし、なぜかIQが強さの基準みたいになってるし、羆は空手の技を使いこなすしで、一話目からとことんテンションが高い。しかもこの勢いが最後まで続くから恐ろしい。
羆だけじゃなくて「おとうさーん!!」と鳴き喚くチュパカブラも普通に出て来るし、異世界転生はするし、意味もなく猫ちゃんも出て来る。
そんなわけのわからない展開が続いたと思ったら、途中で作者が細かなミスをお詫びするだけの一話を挟みつつも「しかし私にもプライドがあり、こんな作品のために頭を下げたくはないのです。」とか言っちゃうし、もう本当にやりたい放題で予測不能な作品なのだ。
こんな一見メチャクチャな内容なのだが、終わってみるとストーリーはそれらしくいい話風にまとまっていて、笑っていいやら怒っていいやら。
分量も決して多くなく文章の勢いで一気に読まされてしまうし、ハマる人には間違いなくハマる一作。さてこんなものを読まされた我々はこの後どうすればいいのか?
決まっている。作者の別作品を読むのだ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
大人はメスガキに負けない――――現代における光と闇の相克である。
時に大人はメスガキをわからせ、あるいは時に大人はマゾ犬ワンちゃんと化してきた。
その永遠の戦いに――――もし、羆が参戦したら?
IQ300の男も、メスガキも、その圧倒的暴力にどれほど立ち向かえるのだろう。
大人はメスガキに負けないが、羆は想定していないのだ。
それでも我々はわからせられる。
圧倒的知性を。メスガキの強さを。空手家のすごさを。熊の強大さを。
――――そして、大人は負けないということを。
この小説を読んだ時、きっとあなたは“わからせ”られる。
一分の隙も無いギャグの無呼吸連打が、稀代の天才による大人の教本であると“わかる”はずだ。