羞恥

日曜日の昼。雨がぱらついていたな。

駅に向かい、石崎と合流。そして沖松も来た。そこから少し歩くとショッピングモールがあるんだ。

とうとう来てしまった。この日が。はー。

カラオケでは無く、予定はサイゼで食事する事にした。

急にカラオケじゃ、ちょっとね。そう、2人では場が持たないだろうと連れがいる。

ゆうなの方もあと2人来るらしい。計6人の、言わば合コンスタイル。


到着すると、一体どうしたらいいんだろうの気持ちが僕を襲った。とにかく楽しもうと3人で話したね。


「あ、あそこじゃね。オーイ。」


沖松が叫ぶ先に3人の女の子。

もう既に顔が真っ赤な子がいる。あと2人の子達は、初対面だった。


「あ、どーもどーも。」


では、入ろうかと沖松は促した。

さっきまで沖松は帰ろっかなとボヤいていた。まあ、分からなくも無い。あいつは関係ないからね。沖松が好きな子は別の後輩なんだよ。仲良しだし、早く告れっての。

でも、来てくれて正解だった。冗談言ったり、ムードメーカーで場を盛り上げてくれる。呼んで良かった。

まあ僕は静かに居た。だって恥ずかしいじゃん。

サイゼに初めて来たって事は、何となく伏せておいた。メニュー表をみんなで開くが、初見。友達からオススメ料理を幾つか聞いたけど、他にも良さげなのがあるな。


「なあ、間違い探しあるよ。」


沖松がメニュー立てから取り出した。多分お子様用の、ミニゲーム。これが意外にも見つからない。

俺が当ててみると、おおー、と女の子達は言う。流石、的な。


「ねえ、人の携帯取らないで。」


ゆうなは隣の子の携帯を持ったり、肩を叩いたり、頭を後ろにぶつけたり、忙しい。

石崎が言ってたように、確かに飽きない子だ。


「ねえ、あれ田端さん?」


「あ、本当だ。」


ドリンクバーでジュースを注ぐ田端。

午前中、僕は部活だった。帰りにおめかしする僕を見た田端は聞いた。


「おい、どっか行くんか。」


「うん、ご飯。」


「女の子達と行くんだよね?」


「………誰から聞いた。(何で知っとるんだこいつ)」


「え、石崎。」


俺も後で行くからとは言ってたけども。  

しれっと居るのがジワる。気を利かせているつもりなのか、こっちを向かない。マジで何しに来たんだ。


その後、ゲームセンターに向かった。

取り敢えずはプリクラを撮ると。

強制的に僕とゆうなと2人きりになる。


「ポーズは、何でも良いよ。真似するからさ。」


「あ、はい。」


撮り慣れてない僕はそう言って、まあ、初めての2人きりを存分に楽しんだ。

ああ、流石女の子だな。プリントを見ると、なんて言うか、写真慣れしてる感がある。皆んな写真映えとか研究するんかな。


女の子は1人バイトで帰った。その子を皆んなで見送り、その後は小物店を周る事に決めた。


「俺は今日全力でフォローすると決めたんだ。」


向かう途中、石崎が意気込みを語る。心強い奴だな。


「ねえ、石崎。俺もフォローした方が良い??」


「ばっ………!!変なこと言うなオイオイw」


石崎は僕の頭を強く抱え伏せた。

ゆうなの隣を歩くもう1人、さやか。

顔が小さく、髪はロングのおさげで、髪の艶が桁外れ。その髪の艶を見た僕は、高校生って自分磨きしっかりするもんなんだなぁと感心した。

さて、この日の先週の話。石崎はこのさやかって子に告白したが、撃沈した。そう、先週。一週間も経ってない。オイ、今日大丈夫なのかこいつ。アレ以来廊下を2人シーンとすれ違ったりするみたいだし。


「この香水良いよな。」


石崎は俺にお試しの物を突きつけてきた。清涼感ある、スーッとした匂い。


「うーん、僕はこういうのが、好きかな。」


石崎の鼻に突きつけた。フローラルな甘い匂い。僕はそういう匂いが好きなんだ。2人の好みは全く違ったけど。

うん、2人だけで盛り上がっちゃっていた。周りを探ると、女の子達は気を利かせてか違う品々を見て喋ってた。

ふと、沖松の目が気になった。


「帰りたい?」


「いや、俺はまだ大丈夫だよ。」


その後またゲームセンターに向かい、俺とゆうなの2人でそこを周る事になった。

会話、よりも質疑応答をした。好きなアニメ、得意教科、趣味、好きな食べ物………


隣同士一緒に歩くと、楽しく思えた。2人恥ずかしがってこれまで喋らなかったけど、2人しかいない。仲良くなった感覚で居た。

横目で見る女の子って、可愛いなと思って、また恥ずかしくなってきた。


時計は6時近い。


「アイス食う?」


皆んな小腹が空いていたから賛成した。寒い時期にアイスはあまり受け付けないが、流れに乗った。

席で皆んなで食べてると、オジサンが近寄ってきた。


「僕たち、もう時間が遅いからね。もうそろそろ帰りなね。」


青少年うんたらの文字を入れたオジサンが言った。

あ、はい、とは返事したけど。


「ねえ、もしかして小、中学生と間違えられてるんじゃない?」


「ええー、ショック。」


身長にコンプレックスを抱えてる全員が落胆した。その後クレーンゲームで遊ぶも、度々感傷に浸る始末。

 

石崎が僕を裏に誘う。


「どうした?」


「ねえ、プリクラ撮りたい。」


「さやかちゃんと?」


「うん。」


いい感じに、ごく自然に誘えないかという作戦会議が開かれた。石崎、顔は整ってるんだけどなあと思ったが、それは今は余計な話だよね。

作戦を開始する。


「ねえ、最後さ、プリクラ撮らない?」


俺はゆうなを誘い、また撮りに行く。

残りの3人。沖松も協力して上手いこと石崎とさやか2人で別機械で撮った。

一石二鳥やんか。

ただ沖松は暇だろうな。案の定向こうのメダルゲームでパチンカスになっていたよ。


「あ、石崎さんと撮ったんだ。」


ゆうなはさやかに言った。

うん、と答えると、彼女は口角を下げた。

僕は見てはいけないものを見た気がした。

何か、悲しい。機械画面をいじる石崎の背中を見れない。

この事は、流石に石崎に話せなかった。

その後、ありがとうと石崎が呟いた。

こちらこそ。


「じゃあ、そろそろ、お開きかな。」

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