第19話

「いいかげんにしろっ!」

 増永が幸子を抑える。

「警察沙汰になるぞ」

「なっても構わないわよ!」

「いいから見とけ」

 増永が猿と二人の女子中学生をボコボコにしていく。

 殴り蹴りする間に、女たちの体は血を流し、変色し、腫れあがり、力を失っていった。

 女たちが気を失ったところで、増永は女たちを全裸にした。

 幸子も協力する。

 二人は脱がした衣服で三人を縛り上げる。

「行くぞ」

 増永が歩きだす。

「待って」

 幸子はカミソリを手に猿に近づいていく。

 そして、縛られている足の先、アキレス腱にカミソリをあて、すっと一気に引いた。

「ぎゃっ!」

 それを二度繰り返し、幸子はその場を離れた。

 家に帰ると幸子の様子に気付いた母が狂ったように泣き叫んだ。

 由紀子は嬌声をあげながら、学校に乗り込んだ。

 そして、そのまま幸子を学校に行かせなくなった。幸子もそれならばと行かなくなった。学校に未練はなかった。会いたい友人もいなければ、学び続けたいこともなかった。

 こんなふうに義務教育さえちゃんと受けなかった幸子だ。

 まともに漢字も読み書きできない。簡単な計算もできない。

 そんな幸子ができる仕事といえば、水商売しかなかった。

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