第20話

 芸能活動にも失敗した。勉強もまったくできない。

 しかし、幸いなことに 私にはまだ美しい顔と男に求められる若い体がある。どん底なんかとはほど遠い。

 幸子はとりあえず銀座をぶらついた。

 すぐにスカウトにホステスにならないかと誘われた。

 壁を超えるのは何度目か。今度は上手くいくだろうか。幸子はこのときばかりは少しドキドキした。

「はい。お願いします」

 幸子は男に丁寧に頭を下げた。

 大丈夫だ。

 こうやって次は銀座の女を演じればいい。カメラが回ってないときの自分の演技力はなかなかのものだ。

 きっと世のなかを渡っていける。まだまだなんとかなる。

 芸能界はもういい。もともとは母の夢だ。

 それを手放し、母との関係を断つことに、幸子は震えるほどの快感を覚えた。

 まだまだ、これからだ。

 このころの幸子は幼いころから修羅場を経験しすぎたせいか、妙にポジティブだった。

 そんな幸子に世間はまた別の厳しさを見せてくれた。

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