第24話 パーティー
※今話のタイトル変更しました。
「それじゃあ、二人の同棲許可に~」
「「「かんぱ~い‼」」」
俺がアイスコーヒー、陽菜がサイダー、姉ちゃんがビールというかなりバラバラな中身のグラスをぶつけ、俺達のパーティーは幕を開けた。
最初のうちこそ穏やかなパーティーだったのだが……
「ゆうとぉ~もう一杯~」
「せんぱぁい~わたしにも~」
二人ダウン入りました。
いや、姉ちゃんはまだわかる。わかりたくないけどわかる。
姉ちゃんの誕生日は四月の初めの方で、俺が陽菜と一人暮らしを始めたころには二十歳になっているのだ。というわけで、まだ正式に飲めるようになってから一か月程しか経っていない。
未だお酒に慣れていないということもあるが、姉ちゃんはお酒に弱い。そして、飲むのも遅い。
今日だってビール一本も飲んでないからね。それなのにこの酔いっぷりよ。今後お酒飲まない方がいいと思う。
そして、問題は陽菜だ。
彼女の飲んだサイダーは普通の、アルコールの入っていないサイダーだ。
前も陽菜が飲んでいるのを見たことがあり、その時は当然ながら何もなかった。逆になんかあったら怖いわ。
だが、今日は何故か姉ちゃんと同じように酔っぱらっているように見受けられる。
ずっと彼女達の前に居たので、姉ちゃんが陽菜にビールを飲ませたわけじゃないのは知っている。……ということはもしかして……アルコールの匂いだけで酔ったのか⁉姉ちゃんより弱いのかよ。
「えへへ~せんぱぁい。はやくはやく~」
ぐいぐいと俺の前に座っている陽菜がグラスを押し付けてくる。
その表情はとても緩んでいて、顔も真っ赤だ。
そんな幸せそうな顔で催促してくるの、なんか可愛いな。
仕方なく陽菜のグラスにサイダーを注いでいると、今度は姉ちゃんからも手が伸びてきた。
「あ、陽菜ちゃんず〜る〜い〜っ!ゆうと、私にも私にも!」
「はいはい」
まだ一本も飲んで無いし、もう一杯くらいなら大丈夫だろう……多分。
缶の中に残っていたのを全て姉ちゃんのグラスに注ぎ込む。
「ありがと〜ゆうと。えへへ〜いい子いい子」
「やめてくれ、恥ずかしい」
俺の頭を撫でていた姉ちゃんね手をどけると、姉ちゃんは「むぅ〜」と言って頬を膨らませた。……我が姉ながら可愛い。可愛いけど!二十歳なんだよなぁ……。大人がすることじゃないから、年齢を考えて控えていただきたい。
「お、お義姉さんこそずるいです!私も先輩になんか……あ、先輩口開けて下さい!ほら、あ〜ん!」
そう言って陽菜は俺の作ったハンバーグを切り分け、俺の口元に持ってくる。
最近は何故だかよくこの「あ〜ん」という行為をやるようになってきていたため、俺は躊躇なくそれを口の中に入れた。そうしないと前のように無理矢理突っ込まれるからな。
「えへへ〜美味しいですか〜?」
「ああ、美味しいよ」
最早定型文となっている返答をすると、陽菜はとても嬉しそうな顔をした。……やっぱり、陽菜にはなんだかんだ言って甘いな、俺。
「ほら、姉ちゃんもしっかり食えよ。折角いい肉でハンバーグ作ったんだから、残したらもったいないだろ」
「はぁーい」
返事はしているものの、姉ちゃんは机に突っ伏していて頭を上げる様子がない。
……しょうがない、今日泊まっていくっていってたし、寝かせるか。
「姉ちゃん、もう寝るか?」
「んー、私はまだ元気だぞ〜?これから寿司を食べるのだ〜!」
「はぁ……。姉ちゃん、立って。陽菜も手伝……えなさそうだな」
姉ちゃん同様、陽菜も机にダウンしている。……陽菜もベッドに運ぶか。
俺は頑張って姉ちゃんを引っ張って無理矢理立たせ、ベッドまで先導する。
バタンッ!という効果音が聞こえる程豪快にベッドへとダイブし、そのまますぐに眠りに落ちた。
次は陽菜だな。
「おーい、陽菜。立てるかー?」
「ん……せんぱいが運んで下さい……」
「……しょうがねぇな」
先程と同じように引っ張って立たせようと思ったのだが、陽菜はそれを拒否した。
机をギュッと掴み、絶対に離さないといった様子。どうすればいいんだよ……。
「……抱っこです、せんぱい」
んん?抱っこ?なんで?
陽奈ってそんなこと頼むような人だったっけ?寝ぼけてるにしてもおかしくないか?
俺がどうするべきか迷っていると、再び陽菜が「抱っこです」と言ってこちらに手を伸ばしてきたので、仕方がなく陽菜を抱き抱える。
陽菜が比較的小柄なこともあり、そこまで重くなかった。
……思えば、俺から抱くのは初めてかもな。
それに気付いてしまったせいで、かなり気恥ずかしくなってきた。躊躇なく抱っこするとか、俺は何やってんだろ。……躊躇以前に付き合ってもない異性を抱っこするとか、ほんと何やってんだろ。
俺は頭の中を無にして陽菜を運ぶ。そう、これは運搬だ。何も変なことではない。
そんなことを自分に言い聞かせながら陽菜もベッドまで持っていく。
だが、ベッドは姉ちゃんが占領していたので、ぐいぐいと押して陽菜のスペースを空けた。
いつもこのベッドで二人で寝てるから、俺より小さい姉ちゃんと陽菜なら十分に寝れるだろう。
「陽菜、今日は姉ちゃんと寝ろよ」
「……はあーい。……おやすみです、せんぱい」
「ああ、おやすみ」
俺は二人が眠りに落ちていくのを見守ってから、まだ料理がたくさん残っている机に戻る。
そして俺は二人の残した料理をラップし冷蔵庫に保管して、皿洗いなどを一通り終わらせた後、床の上で毛布を被って寝たのだった。
久しぶりの陽菜が隣にいない中での就寝は、少し寂しく感じた。
☆あとがき
息抜き回でした。
一応次の話で両親とのあれこれは終わりにするつもりです。
面白かったと思った方は是非、星やハートをお願いします!
感想を頂けるとなお嬉しいです。
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