再会
「はいみんなー転校生を紹介するぞー」
始業のチャイムが鳴り走り回る児童達を席につけると俺は明るめのトーンで話し出した
「うおー、転校生ーー」
「女子か女子かーー!?」
「いや絶対イケメンだよー」
子供たちは一斉に騒ぎ出す
「ほらほら静かにー。よし、入ってきていいぞー」
ある程度静かになった頃、俺はなるべく落ち着いたトーンで廊下に声をかける。なんせさっきは度肝抜かれたからな
呼ばれた少女は凛とした姿で黒板の前に立ち教室を逡巡する
「うおーーかわええーー」
「めっちゃ美人じゃん」
今度は歓声が上がる。当然といえば当然だろうか。まぁ俺はロリコンじゃないからよく分からないが。俺はロリコンじゃないから分からないが
「はじめまして!!転校してきた渡部 渚です!!よろしくね!!!」
そうなのだ。今日唐突に来ることを告げられた転校生こそ今猫かぶって明るい声で話している渚だったのだ
話は玄関まで遡る
◆
俺は職員室をあとにし転校生用の席を用意しに行った。と言っても元から机は余ってたから軽く綺麗にするだけだが。
まだ始業40分前と言うだけあって誰もいない教室で俺は窓際の1番後ろの席を整えると今度は生徒用玄関に向かう。5年生の教室と職員室は2階玄関は1階にあるのでひとつ階段を降りていく
すると誰もいない玄関に一際目立つ色の髪を見つけた
小学生からそんな染めてて大丈夫か、なんて思いながら近づき
「君が転校生か?」
満面の笑顔で話しかけた
少女は振り返って凛とした様子で返事をする
「…久しぶりね、ワタル」
…満面の困り顔で困惑した
「あら、依頼主の顔も覚えてられないのかしら」
その嘲笑ぎみな話し方、マロンカラーの髪と整った目鼻立ちには見覚えがあった
◆
「おいなんでお前がここにいるんだ、てかなんでそんなナリなんだよ」
俺達は場所を一階の人から隠れるために存在するような和室、通称説教部屋に移して話しを始めた。説教以外でも生徒と先生が1体1で話す時にはよく使われているようだ。俺も既に1回使ってるからな。さすがに言った場所くらいは覚えている
「なぜって…私も行くって行ったでしょ。それからこれは今回の仕事をするのに都合がいいの」
渚はこの状況がさも当然の事のように話し続ける
「それにあなたが先生になったのだって仕事に都合が良かったからよ」
「どういうことだ?」
「あなたに助けてもらいたい小学生はあなたのクラスの生徒なの」
「…なるほどな」
クラスにある程度心当たりのあった俺は頷く。
これは決して急に来た転校生が小学生姿の渚であったことや小学生姿の渚が可愛すぎることで頭がいっぱいになったから適当に返事をしたのではない。したのではない
「で、具体的に俺は何をすればいいんだ」
わけのわからないことばかりだが俺も大人だ。小学生がさも当然のように話してるならさも当然のように呑んでやる
「それはね…」
…キーンコーンカーンコーン…
始業5分前の予鈴だ
「この話しは後にしましょ。あなたも他にも聞きたいことあるでしょ」
渚は俺の心の底を見透かしたかのように言った
「そ、そうか」
「…それに話せる時間もだいぶあるしね」
どういうことだ?
俺を送り込んでおいて俺の新任教師としての激動の毎日を知らないのかこいつは
反論しててもしょうがないので俺たちは5年3組の教室へと移動して行った…
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