縦書きの雨


 さらさらと落ちる雨の中、濡れそぼって空虚。

 額を伝う雫と、抜け落ちる体温。

 遠く見えるビルは、雨霞で見えなくとも灰色のまま。

 何処かから、迷子犬の鳴き声が聞こえた気がした。


 土曜日は必ず雨が降る。

 見えない夜が、水に溶けては降り注ぐ。

 ひとりの時だけ流れ出すから、

 たぶん空行く月も、濡れている。

 

 雨が降る夜は、夢を見ない。

 ありもしない記憶は揮発して、

 雲の向こうに、流れ去るのだろう。

 

 言葉が褪せて、灰色になる。

 白紙の日記帳に、雨が滲んでいる。

 流れ落ちるものも、無い筈なのに。

 がらんどうの胸に、染みてくる。


 そぼ降る雫は嘘つきの

 心に刺さる縦書きの雨


 


 それが止んだら、

 空の終わりでも、探しに行こうか。

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