そして、皆いなくなった。いなくなった?

 際に。

 今わの際にか。

 走馬灯がよぎる。

 

 最初、サバンナ地方で出会ったことや。

 

 アンイン地方で。

 ジャガーさんやカワウソさんと出会い、協力してバスを組み立て。

 橋だって、直したっけ。

 

 充電のために、喫茶店を目指し、アルパカさんとトキさんと……。

 砂漠で遺跡を探検、スナネコさんや、ツチノコさんと一緒で。

 

 湖畔じゃ。

 オグロプレリードッグさんや、アメリカビーバーさんと一緒に建物を作り上げて。

 草原じゃ、色々なフレンズの争いを。遊びに変えて。 

 水辺でライブ。

 雪山で温泉。

 ロッジで……。やがて、SSDを見付けた山で、巨大セルリアンを相手にして。

 私が食べられて。でも、サーバルちゃんが、皆が助けに来て。

 そして……ゴコクエリアを目指して船旅を。

 ……全部、思い出だった。

 「……。」

 もう、声も出ない。 

 ひたすらに、私は記憶を見送って、消えていくの。


 「……っ!」

 そのまま、消えていければ、どれほど楽だったか、私の身体ごと。

 だのに、光晴れていくなら、さも私を責めるように、凄惨の光景を見せつけるの。

 光は晴れて。

 でも、フレンズの姿はない。

 セルリアンの姿も、……ない。

 あの、悪夢が見せた、凄惨を、現実にされる。

 違いは、声が出ないこと。悲鳴に悲痛に。救いに縋ろうにも、誰もいない。

 そう、サーバルちゃんだって。

 叫べないけれど、涙が示して。

 《警告!!サンドスターレベル、定量下限値未満!!パークスタッフ、並びに、周辺にいるラッキービーストは、フレンズの保護を優先されたし!繰り返します!サンドスターレベル、定量下限値未満!!パークスタッフ、並びに、周辺にいるラッキービーストは、フレンズの保護を優先されたし!》

 見送ることはできないけれど。

 何が起こったのかを、自分で知ることはできないけれど。 

 腕にあるラッキーさんが伝えてくれて。

 緊急事態であると、窺い知れた。

 でも、……私はどうすることもできない。

 だって、私もまた、フレンズなのだから。

 私の手が、次第に透けていき、煌めく光となって散っていく。

 見つめていく内に、腕にしていたラッキーさんも、落としてしまい。

 私はまた、光に溶けようとしていく。

 《警告!!……かばん。……かばん!!!》

 気付いたなら、警告音声が急に変わり。

 まるで、意志を持っているかのように、私を求めて。

 そっか。

 ずっと一緒に、いたもんね。その音声に、思い出だってあって。

 私は、諦めも感じて。空を見上げて。

 人は、恐れるあまり、フレンズもろとも消し去ろうと。

 ……ミライさんみたいに、どこまでも動物好きな人間ばかりじゃなかったんだね。

 分かったけれど、どうすることもできない。

 だからせめて、見送りに笑みだけを残して、……消える。


 

 そうして、フレンズがいなくなってしまう。

 ……しまう?


 

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