それは甘き消滅か、苦悶なるものか。

 「……でも。」

 「!」

 その沈黙をキュルルちゃんが破り。

 「……このまま、何もしないのも、ダメかなぁ~。だって、サンドスターを食べられたら、僕、何だか嫌だなぁ~……。」

 「!!……。」

 言うことに私は、はっとなる。

 このまま、何もしないのもダメだろうと。 

 何もせずに、このまま見過ごすのも、悪く。

 それよりも、どうにかできるなら。

 どうにかしようと、屈託ない笑顔をして言われ。

 幼いながらも、はっきりとした双眸に見つめられ。

 私は、言葉を失った。

 「うんうん!キュルルちゃんなら、できるよ!」

 「そうね!まあ、これまでもどうにかなったし!あたしは、それに賭けたいな!」

 「!!!」

 サーバルちゃんも、カラカルちゃんも追従して言ってきて。

 仲良く、集まって見せつけてきた。

 「「……。」」

 私は、ううん、その様子にとうとう。

 コノハ博士も、ミミちゃん助手も言葉を発せないでいて。

 「……それに!」

 「!!」

 まだ言い残したとばかりに、サーバルちゃんは付け加えるようで。

 「かばんちゃんが、頑張って見付けてくれたんだもん!きっと、大丈夫だよ!そんな、酷いことにはならないよ!えへへっ!!」

 「!!……ぁ……!!」

 あの、元気付けるような、こちらも屈託ない笑顔で。

 私を信じて、信頼して。その表情は、あの時のまま。

 私と、一緒に冒険していた、サーバルちゃんのまま。 

 それを見たからこそ、私は、口が動き。

 だけども、何も言えなく、別として、涙が溢れて伝う。 

 やっぱりダメだと、言わなくちゃとしても。

 その信頼に私は葛藤に、動けないでいた。

 だからで、力も抜けて。

 私は、とうとうSSDをキュルルちゃんの手に渡してしまう。

 「よぅし!これで、あのセルリアンをぶっ飛ばせるぞぉ!」

 無垢なキュルルちゃんは、手にしたとして、空に掲げて、誇らしく言い。

 そうね、〝最強の武器〟を手に入れたとばかりに、喜んでもいるよう。

 そこに、事の重大さなんて、感じられない。

 「……だ……め……。」 

 分かっていないからこそ、ダメだとここで伝えないと。

 ようやく、口が動いて紡いでくれるけれど。

 声が小さくあり。

 また、キュルルちゃんの歓声や。

 浜辺のセルリアンとの戦闘音に掻き消されて、届かない。

 キュルルちゃんは、そうした後、どうやってこれを起動するか。

 あれこれ考え始めるようで。

 悩みに、首を傾げたり。

 そこに、カラカルちゃんが歩み寄り。

 「いっそのこと、斬ってみる?」

 「?!カラカル、やれるの?」

 「ふふん!任せて!サーバルほどじゃないけど、あたしも結構やるのよ。」

 「うん!お願い!」

 「!!」

 アドバイスをしているようで。

 言うことには、切断すると。

 カラカルちゃんは、サーバルちゃんほどじゃないけどと言いつつも。

 自信は見え隠れしていて。

 キュルルちゃんはお願いするなら。 

 そっと、カラカルちゃんにSSDの入った容器を差し向けた。

 私は、咄嗟に駆けだそうとしてしまう。

 それは危ない。あの容器が封じているからこそ何とかできるのに。

 でも遅く。

 私の反応速度より速く、カラカルちゃんは手を振り下ろして。

 容器を、綺麗に切断してしまった。

 容易く斬れる……。やはりフレンズの能力は、私の思考を越えていて。

 カプセルが切断されたなら。

 中のSSDは、何の抵抗も見せることなく、取り出されて、曝け出される。

 「?わぁ。……何だろうこれ、金属?」

 手にしたキュルルちゃんの第一声は、金属の冷たさで。

 「ほんと、対セルリアン兵器とは思えないわ。」

 カラカルちゃんも、不思議そうに言うだけで。

 「ねねね!これ、どうやって動かすのかなぁ?」

 「?あ、そうだね。」

 サーバルちゃんは、呑気に言っては、どうやって動かすのだろうかと。

 キュルルちゃんは、言われて、それもそうだとして。

 「ん?」

 なおその疑問に、SSDは自ら答えるか。

 切れ目から、サンドスターとは違うスペクトルの光を出して。

 その漏れる光に、キュルルちゃんは不思議そうにして。

 ―ぎゃぁぉおおおおおお?!

 「?!」

 他方、向こうのセルリアンは、怯えの咆哮を吐き。

 どうも、ただ光が出てきただけでもセルリアンには、恐怖を与えるようで。 

 まあ、実験でも明らかになっていたのだけど。

 見ていて、私もそうだけど。

 その場にいる全員も、そんな咆哮にぎょっとしてしまう。

 「……。」

 確かに有効そうだと。

 やがて、キュルルちゃんはじっと見つめているようで。

 ただ、その後は、どうしようかと首を傾げる。

 「あれ?どうしたのキュルルちゃん?」

 「ん?う~んとね、どうやろうかなって。まさか、わざわざ向こうに歩いて届けるような真似、……できないよなぁ。」

 サーバルちゃんが聞くなら、どうも、どうやって届けようかと疑問を呈し。

 呑気に、セルリアンに歩いて届けるなんて方法、バカバカしいやとも。

 「えへへっ!じゃあ、簡単だね!投げればいーのっ!」

 「!」

 それなら単純だと。

 どう考えたか、分からないけれどサーバルちゃんは、言って、にっこりと笑い。

 キュルルちゃんは、それもそうかと、疑うこともなく頷いて。

 手にした、切れ目のある立方体をサーバルちゃんに手渡した。

 私は、いよいよまずいと思い、慌てて走り出しそうであり。

 「嫌な予感がするのです。」 

 「まずいですね。」 

 合わせて、コノハ博士も、ミミちゃん助手も察して、私と一緒に止めようと。

 飛翔し始めて。

 「いっくよー!えーい!!」 

 「?!」

 サーバルちゃんは知らずか。

 手にしたSSDを、セルリアン目掛けて、勢いよく放り投げた。

 その球速、速く。私じゃ追い付けず。

 まして、コノハ博士たちでもつい、取り逃してしまうほどで。

 真っ直ぐ、セルリアン目掛けていった。

 「ああ!!」 

 私は、どうにもできず叫ぶ傍ら。 

 《Sand Star Destroyer drive!》

 無慈悲に、無機質な声が、その立方体より漏れ聞こえる。

 全てにおいて、遅く、手遅れであると、私は突き付けられた気がして。

 その通りにか、立方体に変化が起きる。 

 切れ目は十字になり、開き、発光を強めて。

 さらには、覆っている何かを吹き飛ばすように、衝撃波を放った。

 「!!なっ……。」

 露になるその姿に、言葉を失って。

 露になったのは、立方体の中に覆い隠されていた物らしく、球体。

 光る、水晶玉にも見える。そう言えばと、詳しい中身は知らずにいたっけ。

 その球体、露になるなら、鈴のような音を立て始めて、発光し。

 「?!うぅ?!」

 その音量を強めて、より甲高くしていき。私は堪らず、耳を塞ぎ、動けなくなる。

 「わぁ?!」

 「な、何よこれっ!!」

 「あぅぅぅ?!動けないのです!!」

 「うぅぅ!!」

 まして、私よりも感覚の鋭いフレンズたちは。

 なおのこと動けなくなり。

 ―ぎゃぁぉおおおおおお?!

 一方で絶大に、悲鳴に似た咆哮をセルリアンは上げていた。

 《5,4,3,2,1 Impact!》

 「?!なっ?!」

 SSD……の中の球体は、急にカウントを取り始めて。最後、言い締めたなら。

 「?!わぁああああああ?!」

 衝撃波と急激な閃光を放つ。

 その閃光。

 私たちのいる風景、消し飛ばすようなほど。

 「?!あぐぅぅぅ?!」

 光に包まれる中、私は全身に激痛を覚えて。

 辛うじて、目をすぼめて見れば、私の身体から光る何かが立ち上り。

 光の中に吸い込まれていくのを見て。

 「!!」

 サンドスターだと、明白。

 「な、何よこれ!!!か、身体が……い、痛い!!!」

 「?!い、痛い痛い痛い!!!」

 「!!」

 光の向こうから、悲鳴が上がり。

 カラカルちゃんと、キュルルちゃんのもので。激痛を感じていると。

 「あぅぅぅ!!!何ですかこれは?!」 

 「ま、まずいを通り越してます……!!全身が焼かれるようです!!!」

 コノハ博士と、ミミちゃん助手も。

 「い、痛い痛い!!な、何これ?!……痛いよ!!」

 「!!」 

 極めつけは、サーバルちゃん。

 サーバルちゃんの悲鳴には、私は特に痛々しく感じて。

 「……か、かばんちゃん……は?!大丈夫?!」

 「?!さ、サーバルちゃん?!」 

 その中であっても、案じて。

 ……私を。

 耳にして私は……。涙が零れるのを感じる。

 私を、案じてくれた。まるで、最初に会った時のように。夢の時とは違って。

 サーバルちゃんは、私を案じて……。

 「……あ、……ああ!!」 

 だからこそ、絶望する。

 夢のように、絶望する。 

 「ぁああああああああああああ!!!!」 

 発狂に、私は声を上げて。

 やってしまったと。

 使ってしまったと後悔に。

 「!!かばんちゃん!!……い、痛い?痛いよね!!う、うん!分かった!!そこにいるよね!!ねぇ!!」

 「!!サーバルちゃん!!!あ、わ、私……!!」

 その叫び、サーバルちゃんは痛みからと捉えて。

 呼び合うように、私に言ってきて。私は、サーバルちゃんを呼ぶように言うが。

 その次に、何を言おうと、言葉が出ないでいる。

 そんな最中に。

 「!!」

 私の声を聴き、足音が近付いてきて。さらには、私を抱き締めてくる。

 それは、サーバルちゃんだ。光の中、私を見付けてくれて。抱き締めてくれて。

 何でと思い、目を丸くしていたら。

 「痛いよね?うん!わ、分かるよ!でも、大丈夫だから!あたしがいるから!」

 「……!!さ、サーバルちゃん……!」

 安心させるように言ってくれて、にっこりと微笑みを向ける。

 光の中で、その笑顔は捉えられて見れば、神々しささえあった。

 「……っ!……っ!!!」

 そのまま、光に溶けて消えてしまいそう。だからこそ私は、言わないとと駆られ。

 「ご、ごめんなさい、私!!!」

 「うん?」

 「……許して!!ごめんなさい、皆……。サーバルちゃん!!!!」

 「うん?……でも。」

 「!!」

 だからこそ、言いたい。

 このようなことをしてしまった、私のことを、詫びるように。

 サーバルちゃんは、静かに聞いていて。頷いて。

 だけれども、許すのないの以前にと、疑問に思うようで。

 「かばんちゃん、謝るなんてどうして?かばんちゃん、いい子じゃない!皆のこと、考えて、それで、助けるために駆け付けて!謝ることなんて、ないよ!」

 「あ……!ああ……!!」

 そもそも、私が謝る必要なんてないと。 

 慈愛に満ちた笑み添えて。

 自分だって、激痛があるだろうに、精一杯、言ってくれて。

 それに、私は許されただろうか?

 ……そもそも、サーバルちゃんだから、そんなこと、考えていないか……。

 私は、結局どうなのかも分からずにいて。

 その内に、光は強くなり。

 とうとう誰の姿も見受けられないほどに溶かされてしまう。

 ―ぎゃぁぁぁおおおおおおあああああああ?!

 最後、巨大セルリアンが上げる、断末魔の叫びが、衝撃と共に全てを凪いで。

 ……私の意識は、途切れた……。

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