SSD⇒サンドスターデストロイヤー

 そうして、食事を採り、片付けたなら。

 研究に戻るも億劫に、なら、団欒がてら、私は二人が持ってきた物。

 多分研究資料になるかな、それに目を通して、話題に花咲かせようと思う。

 二人も理解して、テーブルの上に、持ってきた資料を広げる。 

 「……先に言って置きますが……。」

 「我々でも、理解できない言葉が書かれてあって、全部は読めませんでした。手記の方はまだ、目を通していませんが。」

 「!……そうなんだ……。」 

 その前にと、椅子に腰かける二人は注釈に言い。

 何でも、目を通してはいるが、難解らしく。

 その前置きを言われると、私は緊張に唾を飲み込んでしまった。

 「かばんなら読めるのです。早く読むのです。」 

 「期待していますよ。早く読むのです。」

 「!えぇ?!……まあ、頑張るけど。」 

 私の緊張よそに、二人は本の読み聞かせせがむように顔を覗かせて来て。

 その強引さは、二人らしいけど。

 まあ、頑張ろうと私は意気込んで、資料に目を通し始めた。

 「……ええと。」

 読み聞かせようと、口を開いて、文字の塊を追う。

 その資料、研究資料らしいや、色々と書き込まれて。

 また、私の知らない言葉で、説明されてもいた。

 ……そこは、辞書を片手に、調べつつ。読み進めて。

 「……つまりは?」

 「……何なのです?」

 「……ええと、ね……。」

 やがて、つまりはと聞かれ。 

 私は答えに窮して。

 頭を抱え、言葉を探す。

 また、気まずい文章もあって、果たして口にするべきか、迷いまである。 

 「……。」 

 そこは、子どものようにせがまれるのだからと、意を決して。 

 顔を上げて、二人を見据える。

 「……対セルリアン用で、〝サンドスターデストロイヤー〟。略してSSDだって。でも、これは……。」

 「なんと……!」

 「そんな物があるのです?!」

 「!!……うぅ。」 

 その、重要な言葉を告げる。

 資料の中に存在した、ピンとくる言葉とは、サンドスターデストロイヤー。

 略称もあって、SSDと。

 セルリアン用ともあれば、希望にもなりえて。なのに、でも、と。

 その〝でも〟の先に、私は顔を暗くする。

 希望に際して、その先にある絶望を。

 果たして私は口にできるかと、躊躇いがある。

 まして、セルリアン用の道具となれば。

 希望もあると二人が露にするのだから、なおさら。

 私は、また言葉に窮してしまう。

 その希望に染まる顔色、見ていられなく、視線さえ合わせられなくて。

 「?!どうしたのです?」

 「!……ううん。大丈夫。……。」 

 コノハ博士に心配されるけれども、私は首を横に振り、大丈夫だとして。

 「……かばん。その様子は、まずいことが書かれていたって、顔ですね。正直に話すのです。大丈夫、我々はどんな言葉であっても、受け止めます。」

 「!!ミミちゃん助手……!……うん、そうだね。」

 さらには、ミミちゃん助手にも励まされるなら、決意もする。

 ミミちゃん助手は、そのために、気合まで入れて。

 その様子に、頷いて応じて。

 あの時躊躇った、〝でも〟のその先を紡いだ。

 「セルリアンも倒せるけど、同時に、フレンズも消えちゃうんだ。」

 「……え?!」

 「……なんと?!」

 「……。」

 それは、二人を驚愕させる。 

 そう、SSDを使用したなら、フレンズまで消えてしまうと。

 言って、私は沈み込む。

 「……かばん、それは、どうやって起こると?」

 「いうことですか?」

 「……!……そうね。」 

 繰り返させるなら、それは、どういうことだと、原理はと、深堀をも促して。

 私はまた、言葉を選んで。 

 「SSDって、サンドスターに作用して、共振崩壊反応を連鎖的に発生させて、そこから放出されるエネルギーによって、セルリウムを分解、ううん、完全消滅させる物ということになるの。」

 「?!何ですと?!」

 「かばん、簡単に言ってください。つまり?」 

 「……ええと。」

 口にするけれども、二人は理解してくれない。  

 私はまた、迷いながら。

 「……〝けもコーラス〟を起こすの、それも強制的に。」

 そう、紡ぐ。

 「……?」

 「……。かばん、別にそれは、まずいことにはならないのでは?それで、消滅するとは思えないのですが。」

 二人は、それを聞くと驚愕から一転、疑問に首を傾げてくる。 

 別に、〝けもコーラス〟自体、珍しいことじゃないとして。

 上手くいけば、いつでもどこでも起こせるとも、その瞳の奥は言っていて。

 見ていたからこそ、言える。

 知っているからこそ、訴えれる。奇跡の情景だと。

 「……そうじゃない。その、皆が思っている、そんな優しいものじゃないの。」

 「「?!」」

 だからこそ、否定しないといけない。そんな、優しいものじゃないと。

 私は、鬼気迫るように吐き捨てた。

 その表情から察して、二人はまたぎょっとして。

 「強引。そう、強引に引き起こすの。それも、皆傷付いていても、立ち上がれなくても、もうダメだとしても、強引に。……いや、もっと別の言葉があったかも。容赦なく、そうフレンズがどうなっても知らないと……。そんな感じで、無理矢理エネルギーを放出させるの。……こうなると、どういう意味か分かる、よね?」

 優しくはない、その先は。

 強引、強制。列挙したくないほどに、トゲのある言葉だらけ。

 そうであっても、的確に伝えるには、こうしかない。

 そう、だからこそ。

 強引だからこそ、容赦なく。それこそ、傷付いて倒れていて、もう立てなくても。

 無理矢理フレンズを象るサンドスターを奪ってまでも、セルリアンを殺す。 

 それが意味するのは、として、私は、辛いけれども、二人に問う。

 「……フレンズとしての、消滅。」

 「……我々は、ただの動物となってしまう。」

 「……そう。」

 辛いからこそ、分かっているからこそ、二人は分け合うように紡ぎ。

 私は、頷いた。

 その通り。

 消滅……といえば、丸ごとと思ってしまうけど。

 サンドスターが消滅してしまうだけであり。

 元となった動物が消滅するわけじゃないけど。

 問題は、その後。

 その結果、サンドスター消失と共に、記憶、思い出まで消失してしまうこと。

 ……もし、記憶が、そうであっても残っていたなら、救いになるけれども。

 コノハ博士から聞いた話じゃ、忘れてしまっていると。そうなると、辛い。

 「「……。」」

 空しく木霊するように、その事実突き刺さってきて。

 私たちは、何も言えないでいた。

 「……かばん。どうするのです?」

 「!……ええと。」

 その沈黙をまず割り、コノハ博士は私に聞いてきた。

 顔を上げて、その瞳見るなら。

 純粋に真っ直ぐな瞳であり、私は迂闊なことを言えないと、口ごもってしまう。

 「……どうしよう……。」

 言葉は思いつく言葉なく。私は迷い果てて、頭を抱えてしまった。

 「……かばん、いいのですよ。」

 「!」

 ミミちゃん助手は、席を立ち、私の肩を叩いて、優しく言ってくれる。

 顔を上げたなら。

 「急ぎでもないのです。悩むなら、悩んでいいのです。そうして、結論を出せばいいのです。」

 「……コノハ博士。……うん、そうだね。そうしよう。」

 コノハ博士も、席を立ち、私に歩み寄って、優しく手を添えて、言ってくれる。

 慰めに。

 そう、結論を急ぐ必要もないと。

 悩むなら、とことん悩んで、その後で、結論を出せばいい。

 言ってくれたコノハ博士に、私は頷いて。

 「ありがとう。そうする。」

 「いいのですよ。いつものことです。」

 「やれやれ、人は悩み多いものです。」

 「……あはは。」

 お礼を言うなら。

 二人は、口々に言って、呆れてもいて。

 それが、二人らしく、私は笑みを浮かべた。

 

 団欒を終えては、それぞれ作業をして。

 私はまた、研究室に戻ることに。

 二人は、補助として、資料整理や、分析をやってもらい。

 なお、他の作業によって、今研究室には私一人になる。

 無機質の機械たちの音だけが響き。

 私はその中でまた、コンピューターのキーボードを叩く。

 「……。」

 その側に、二人からもらった、資料があり。

 ふと手を止めて、見つめて。

 その資料にあった、中身を思い出しては。

 悲しみに、言葉が出なくなる。

 二人には話していなかったけど、ううん、話すことではなかったけど。

 これには、人の恐怖というものも感じられた。

 恐怖。

 悲しいけど、セルリアンだけじゃなく。

 フレンズもまた、人の中には脅威と思う人もいて。 

 そういう人たちは、怯えにこのような悲壮なことも容易に思い付くの。

 脅威であるからこそ、平気でフレンズを犠牲にもできる。

 ……そう、だからこそ、悩んでしまう。

 フレンズたちを消滅させたくもない私には、その選択肢を選べない。

 もっと別の、選択肢だってあると。

 悩みに、ヒントを求めて。私は辺りを見渡した。

 「……!」 

 ふと、セルリウムの水槽に視線が行き、蠢きを見たなら。

 ……そのSSDなら、キュルルだって、殺せる。

 それに、私から離れていったフレンズだって……。 

 「!!!ううん!!だめ!!」 

 悪い思考が溢れて。

 私は、頭を振り。

 その悪い思考を払い落とす。

 それじゃいけないと。そんなの、ダメだと。

 そうして、振り払ったなら、忘れるように私はキーボードを叩いた。

 

 「……。」 

 忙しなく調べて、思考もして。

 でも、答えは見つからず。私は思考もそこまでにして、休んで。

 「……っ!」

 そしてまた、さよならの夕焼け見て、目を覚ますの。

 心の締め付けに、また涙が零れて。

 考えたくないと思っても、どうしてか。

 私はまた、さよならの夕焼けの情景を思い出してしまう。

 苦しくもあって、どうにかしたく。

 思考を巡らせるけど、やっぱり私じゃ、見付からない。

 方法は? 

 そう、朝日射し込む部屋の、隅の陰りに問う。

 「……。」

 薬草とか、お薬?

 それも違う。

 思い出を完全に消す?できるの?

 でも、やっぱりそれじゃ、解決できないや。

 「……!」

 だけれども、唯一の方法があって。それは、SSDであると。

 セルリアンを消滅させることもできるし、そして、キュルルだって……。

 いや、違う、そうじゃない。 

 サーバルちゃんに戻ってきてもらうためだとしても、その選択肢は取れない。

 頭を振り払って。

 また思考して。 

 「……それもそうだけど、そう、セルリアンを倒すためだけ。それだけ。それだけのために、得たい。」

 私は、言い聞かせるように繰り返すなら。

 その陰りより生まれる、悪い思考に則ってそうしたいわけじゃなく。

 単に研究の一環として、セルリアンを純粋に倒す目的であるとして。

 意を決したことを述べる。

 そうだよ。

 私は今、セルリアンをどうにかするために、研究をするの。

 そうしようと、私は頷いて。

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