「先生、私父から萌ちゃんの所は母子家庭って聞かされていたんです。

稲尾さんは以前から離婚されていたんですよね？」

「それは私も知らなかったんだよ。しばらく音沙汰もなかったから。

友人に頼んで調べて貰ったんだが、彼とも連絡が取れない」

そうだった。

健二が任意同行を依頼していた男性も行方不明になっていたのだ。

「稲尾さんはご兄弟とかいらっしゃらないの？」

もしかして兄弟、それも双子なら。。

「残念ながら彼は一人っ子なんだよ」

「そうですか。。」

全てが八方塞がりになっていた。

「とにかく私、父の了解を経てその旅館に行ってみます。彼に会ったら何か分かると思うから」

琴美はどうしても稲尾に会って確かめたい事があったのだ。

「琴美、今は無理をしないでリハビリに励んで。

それと、何か行動をする時は誰かと一緒でないと絶対に駄目よ」

陽子は心配そうな顔をして言った。

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