第19話
ドアに鍵がかかる音がしたと同時に、目隠しをしているにも関わらず火が真っ赤に燃え上がるのがわかった。
どうしよう。このままでは本当に焼け死んでしまう。
「助けてー!お願い誰かー!」
声は響くものの、火の粉が琴美の足に降って来ていた。
多分かなりの至近距離まで火は近づいているのだろう。
声を出すと煙を吸ってしまう。
もうここまでかもしれない。
お父さん、勝手な事ばかりして御免なさい。。
彼女の意識は段々と薄れていった。
「ことみ!大丈夫か?」
「琴美ちゃん!」
誰かが私を呼んでいる。
これは夢なのかな。。
頭が痛い。吐き気がする。。
遠い記憶の中で救急車の音や消防士の声が聞こえる。
それからの記憶は琴美にはなかった。
目を覚ました時、天井が白く此処は病院だという事がぼやーと分かった。
ただ身体を動かそうとしても思うように動かない。
目だけは辛うじて動かせる。
口には酸素マスクがはめられ、どうも全身ミイラのように包帯が巻かれているように思えた。
見回りに来た人が私に気付き、慌てて部屋から出ていったかと思うと、先生らしき人がやって来た。
「良かった、もう安心だよ。よく頑張ったね」
彼はそう言うと心電図や色々な機械の数値を見ていた。
私はどうやら助かったようだけど。。あまり覚えていない。
夢の中で聞いた救急車の音などは本当の事だったんだ。
しばらくすると健二と陽子が駆けつけて来た。
陽子は目を真っ赤にして泣いている。
「琴美!良かった」
健二はまだ動かせない手を優しく握りしめた。
私は目で酸素マスクを取ってと合図をした。
陽子はナースステーションに聞きにいってくれたようで、戻るとマスクを外してくれた。
「お父さん、陽子。私助かったのね」
琴美は小さい声で呟いた。
「あぁ、陽子君から琴美の電話が変だったと連絡を受けてね。
必死に探していたんだよ。」
「どうしてあの場所が分かったの?」
「私の所に電話があったの。刑事の娘さんが危ないからって」
「その電話の人って誰なの?」
琴美はびっくりして聞き返した。
陽子は首を横に振った。
場所だけ告げるとすぐに切ってしまったと言う。
急いで健二に連絡をして言われた場所に辿りつくと、工場の地下室から火が出ていてもう少しで私は危なかったらしい。
あそこは工場の地下室だったのか。。
でも誰が?私があそこに居たのを知っているのはあの男だけのはず。。
琴美は施設を出て後ろから殴られて気絶した事、何処かに監禁された事、稲尾だと思っていた男が灯油で火をつけた事を話した。
その時、はっと思い出したように2人に叫んだ。
「萌ちゃんが危ないの!お願い、彼女も何処かに監禁されているわ!」
2人は黙って琴美の話を聞いていた。
陽子の目からまた涙が流れていた。
「冷静に聞くんだよ。萌ちゃんの遺体が見つかったんだ。。」
健二は眉間にシワを寄せて悔しそうに語った。
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