第18話

水滴が頬にあたる冷たさで目を覚ました。


此処は何処なのだろう。。

確か施設の帰りに頭を殴られた?

記憶を辿りながら身体を動かそうとするが、手足は縛られていて目隠しもされていた。

辛うじて声は出せるようだ。


縛られている手で壁の感触を確認すると、周りはコンクリートのようだった。

何処かの倉庫なのか地下なのか分からない。


誰かー!助けてー!


大声を上げてみた。

声は響きわたる。

ただ頭部がズキズキする程痛い。


冷静にならなければならない。

そう琴美は心に決めて、地面に何か落ちていないか探してみた。

ザラザラする砂だけで、何も手にする事は出来なかった。


どれぐらいの時間がたったのだろう、遠くから鍵を開ける音が聞こえてきた。


琴美は張り裂けそうな恐怖心を押さえて足音を聞いていた。


ピタリと琴美の前で止まった足音。


そう思うと彼女の髪がいきなり引っ張りあげられた。


「起きたか?」

低い男の声が響きわたる。


「此処は何処ですか?貴方は誰?どうして私にこんな事をするの?」

震える声で聞き返す。


「お前は色々探りすぎたんだよ。忠告もしたはずだ!」


多分あの脅迫状の事をいっているのだろう。


「萌ちャんは何処?あなたが誘拐したんでしょ?」


男は琴美の髪を力強く離し、足で身体を蹴り付けた。


「お前には関係ない。それにもうすぐ此処も火の海になる」


火の海に、、?


「どいつもこいつも情に流されやがって。

俺は金さえ手に入れば良かったんだよ。あの友似も余計な探索さえしなかったら誰も殺したりしなかったのに」


「あなた稲尾さんなんでしょ?自分の愛した人を殺すなんて。。」


男は一瞬言葉を止めたが、すぐに不気味な笑いをした。


「何も知らないんだな、俺たちの事は。

それでいい。

これから灯油をまく。

お前は此処で焼け死ぬんだよ。


最後にこれだけは教えてやるよ。

俺はあの女の旦那でもなければ子供の父親でもない。

だか老舗料理は手に入れる。

わかるか?このカラクリが」


勝ち誇ったように笑いながら足音は玄関先に向かっている。


「待って!これ以上罪を犯さないで!」

琴美が大声で叫ぶも、彼にはその声は聞こえなかった。


しばらくして灯油の臭いが漂ってきたかと思うと男はタバコを吸い出した。


「ジ・エンド」


そう言うと、火の付いたままのタバコを下に落とした。


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