第17話
琴美は施設に向かっていた。
萌がどうしていなくなったのか直接聞きに行きたかったからだ。
友似夫婦の事は多分大丈夫だろう。
陽子はしっかりとした女性だ。
どんな状況でも彼を支えるだろう。
健二から連絡を受けたからだろう、施設には警察官が来ていた。
彼の娘だと言うと、彼らはなんども頭を下げて中に入れてくれた。
施設長の話では、萌達が庭で遊んでいてお昼の用意をしている間にいなくなったという事だった。
誰かと手を繋いで施設を出て行く姿を見たという子供の証言もあった。
ニット帽をかぶった背の高い男だったらしい。
萌が手を繋いでいたという事は知り合いだったっという事だろうか?
それとも母親の居場所に連れて行くと言われたのだろうか?
どちらにしても誘拐された事に間違いはない。
友似に脅迫状の内容を読んで聞かせた時に、萌が心配だと言った言葉を思い出した。
変に胸騒ぎがする。
施設長に何か連絡があれば知らせて欲しいと言付けて、琴美は施設を後にした。
歩きながら彼女は陽子に電話をかけた。
普段と変わらない様子の陽子にほっとした。
私が思った通り、彼女は友似の話を自分の中で消化して彼を支える覚悟をしたのだろう。
琴美は施設で聞いた話を陽子に伝えると、稲尾の背丈の事を友似に聞いてもらった。
稲尾の背丈も180㎝ぐらいだったらしい。
(やっぱり萌と一緒にいるのは稲尾。。)
父親である彼が萌に危害を加えるとは思えない。
でも友似は母親の殺害は彼ではないかと疑っていた。
なんとも理解し難い事だった。
琴美は電話をしながら歩いていたので背後に気配を感じるのが遅れてしまった。
突然彼女は頭に激痛を感じた。
そして、その場で意識が遠のいていくのが分かった。
「琴美?どうしたの?」
携帯から陽子の声が聞こえてくる。
でも通話はすぐに切られてしまったのだった。
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