第16話

「ちょっと待って下さい。先生はあの猫の事件は稲尾さんがやったと思っているのですか?」

琴美は彼の言葉を遮った。


友似は深いため息をついて言葉を続けた。


「君があの後自宅に戻ってから稲尾の事を色々調べたんだ。

とても気になったから。。

連絡先は不明だが、彼の実家である旅館なら何か分かるかもしれないと思ってね。

そうしたら。。彼は旅館を継いでいるっていうじゃないか。

私は驚いたよ。

それと同時に彼女と赤ん坊の事が脳裏に浮かんだんだ」


「え、稲尾さんは勘当されたんじゃなかったのですか?」


「そう。でもご家族からこれ以上連絡はしないで欲しいと電話を切られてしまったんだ。


私は稲尾と美苗達の事を調べてもらおうと、角田君という青年にコンタクトを取った。


彼は稲尾には会えなかったらしいが、美苗達の居場所は分かったと言ってきた。

そして私は萌ちゃんと名付けられた女の子と2人で住んでいる事を知ったんだよ。


まさか美苗が亡くなるなんて。。それも死に方が稲尾に話した殺害の仕方だったとは。。私はどう償ったらいいんだ」


友似の目から涙が流れていた。


「先生、陽子さんはこの事を知らないんですか?」

琴美はゆっくりと尋ねた。


彼は頷き、

昔の話だった事と、調べている間は彼女に心配はさせたくなかったと言った。

そして、帰ったら全てを話すと。。


私は陽子さんに電話を掛けた。

話が終わったから帰ってきて欲しいと。

「父に全てを話してみます。警察から何か聞かれると思いますが、、」


「分かっている。私も知っている事は全て話すつもりだよ。それよりも萌ちゃんが心配で仕方がない。生きていて欲しい」



カンカンカンカンっと螺旋階段を登る音がして、陽子が帰って来た。



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