第15話
私は絶句したよ。
彼女は今までどれほど悩んでいたのだろう。そして、どんな思いで子供を諦める事を決めたのか。。
鍼灸の力で堕胎をする事は出来るが、最終的には婦人科で処置してもらう事になる。
それでも彼女は手術でお腹の子を殺す事は出来なかったのだろう。精一杯の気持ちだったに違いない。
私は悩んだ末2つの条件を出した。
婦人科にはすぐに行く事、そして稲尾に来てもらい、最後に2人でお腹の子に向き合って欲しいと。
彼女は泣きながら頷くと、私は彼に電話をした。
しばらくして稲尾が血相を変えて私の家にやって来たよ。
両親から何も聞かされていなかった彼は、美苗を抱きしめて2人で産む決断をした。
彼は老舗旅館を継がない代わりに勘当されたようだった。
それから可愛い女の子が生まれたと葉書が来たんだ。
葉書のやり取りは続いたけれど、ある時から何処にいるのかわからなくなってね。
私も治療院を開いたり陽子と一緒になったりしてそれっきりだった。
そしたら君から猫の不審死を聞いて、私は昔の事を思い出したんだよ。
東洋医学で他殺を自殺に見せかけられますか?と聞かれた事を。
彼は推理小説を書いていて、ネタにするといっていたんだが、、
「ちょっと待って下さい。その彼って?」
琴美は青ざめた。
友似は下を向いて静かに頷いた。
「私の生徒、稲尾だ」
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