第14話
私がまだ学生達に解剖学を教えていた頃、萌のお母さん(美苗)と父親である稲尾という男性も私の生徒だった。
彼女は学内トップの成績で、それでいて美しい女性だった。かなりモテていたと思う。
稲尾も成績が良くて、2人とも私の所に解剖学辞書を持って来ては質問責めにしていたものだ。
そんな2人が付き合っているんじゃないかと噂が流れるようになった。
とても仲が良かったからね。
美苗は頑なに否定はしていたけれど、稲尾は満更でもなさそうだったよ。
しばらくして美苗が学校に来なくなってね、私は心配になって自宅に電話してみたが取り次いでもらえなくて。
稲尾にも美苗の事を聞いてみたんだ。
彼も私と同じ様に連絡が取れないと言っていた。
自宅まで行ったらしいが、逆に親御さんに追い返されたらしい。
心配しながらもなす術がなくて。。そんな時、彼女から退学届が学校に提出された。
あんなに学力があって熱心に勉強に打ち込んでいた彼女が退学なんて。
私はショックだったよ。
雷が鳴るぐらい酷い雨の日だったなぁ、私の所に美苗がやって来たんだ。
ずぶ濡れになりながら。
自宅から抜け出して来たと言っていた。
彼女は5ヶ月になる子供を身篭っていたんだ。
私はすぐにその子供の父親が稲尾だと分かった。
彼女は泣きながら私に流産させて欲しいと言ったんだ。
このまま自宅にいたら婦人科で無理矢理手術させられると。。
美苗は迷っていた。産みたいが1人で育てる自信がないって。
私は父親になる人には相談したのかと聞いたよ。
彼はこれから実家を継がなければならない人だと言っていた。
稲尾の家は老舗旅館をしていて、彼はそこの御曹司なんだと。
どうしても産めないのならば、せめて手術ではなくて東洋医学の力で堕胎したいと。。
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