猫の首にあったあの傷。

何かで故意につけたように思えた。

そしてあの猫の姿からして、かなり手入れをされているように見えた。

もしかしたら飼い猫で首輪をしていたのかも知れない。

健二は琴美の疑問に耳を傾けて聞いていたが、そこまで深入りする事でもないだろうと思った。

朝が来て、健二は県警に向かった。

琴美は父を見送った後、もう一度裏庭に行ってみた。

琴美の家の庭は広く、所々に花を植えていた。

ちょうど白い秋桜が綺麗に咲いていて、何本か家に飾ろうと摘み取った。

（猫の遺体があったのはこの辺り）

琴美は当時の様子を頭に浮かべた。

交通事故なら道路からかなり飛ばされてきたという事になる。

でもそんな風にはとても思えなかった。

誰かが如何にも見つけて欲しい様な、そんな感じにも思えた。

秋桜の花の匂いを嗅ぎながら考えていると、ふと時計の針を見て慌てて叫んだ。

「いけない、遅れちゃう！」

琴美は鍼灸師の先生の所で修行をさせてもらっていて、出勤時間をすっかり忘れていたのだった。

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