第一章第二話ーーデート

ー埴岡と結の出会いはなんだといわれたら取り立てて思い出もない海岸と答えるだろう


きっと、そこが始まりなのだ

きっと、などとつけたのは、理由があるーー理由はそもそも同じ会社だったこと

そのときは、どうとも思ってなかったことからだ


埴岡にとって人生で何がしたいのか?一番したいことは何かと言われたら

ためらいもなく、絵巻と答えるだろう

「化物婚礼絵巻」その再現

今は亡きじいちゃんと盛り上がったその絵巻は今でも胸の内にある


だが、結婚というのは一人でできるものではなく、当然相手もいることから

埴岡は結婚できずにいた

「はぁ~、、、、」

埴岡にとって、海の打ち寄せる波を見ることはなんとなく気持ちを落ち着かせるのには向いていた

ーーただ、思い出がないというだけで


ザザーン、ザザーン

「ん、、、」

きらめく海のその真ん中で、一人の人間が素潜りをしていた


夏色に焼けた肌

パンツスタイルでかつ、上は短めという女だったら扇情的きわまりない恰好で

その人は潜っていた

「ぷは」


漆黒の髪が濡れーーきらめいている

濡れたシャツの内側から見える肌は残念ながら胸は見えなかったけれど

ちらりと見えるへそがキレイだった


「あ、あの俺と協力してくれないか」

「へ?!」

今思えばそれが出会いだったのだろうーー


「あ、あの私に何か用ですか」

「あ、あの白無垢ってどうーー似合うかな、君に」

いきなり日本型婚礼衣装を着せる前提で話をかける

じぶんでも、まずったと思わなくもなかったがだから、どうするということもない

「あー、、、(、、、思えば心の大半は男だし、結婚式の衣裳なんて一生着ることはないんだから、着とくか)

ありがとうございます、あのものはためしにきていいですか?」

「ありがとう」

両手をにぎりしめる

「君しかいないーー愛してるよ」

「へ、、、、」

頬熱くなるーー初めてだった、初めての告白だったのである

(え、どういうこと、まさか告白じゃないよね、でも、期待していいのかな)

ぐらつく心

心が男だろうが、じゃなかろうが告白されたら嬉しいのである

ーー好きじゃない相手を好きになるくらいには


高まる心臓ーーもう、男として彼のことが気になってるのか

それとも女としてなのか結自身わからなくなりながら

ーーいや、それにしても告白である

埴岡自身も、告白したーと思っている


なんの気負いもなく言葉がすべったというか、言った後に顏にこそ出してないが

動揺しているというか

とにかく、告白である

「、、、あの、、、うれしいんですけど、その、それってどういう意味ですか、、、?」

「もちろん決まってるじゃないかーー男としてだよ、君のことを男として気に入ってるんだ」

いっちゃったーーほぼノリでしゃべってるような埴岡のセリフに

きゃー告白だー恥ずかしいー心で絶叫する結


結は顏をますます赤くしてなんだかもう彼の顔を見ることはできない


「いやかい?君の女はどうだろうね?ぼくのこと好き」


解離した、致命的だーー女としてではなく結もまた男として好きになったのだから


(あ、、、)

冷静になった?そんなことはないーその言葉をきっかけに男として彼のことが好きなのだと考える

「はい、好きですよ、でも、あの、、、私あの、白無垢ってどうしたらいいんですか

ああ、それと両方のご両親に挨拶(自分ちはしなくていい)しなきゃいけませんよねはぁはぁ」


ーーいちゃいちゃしたーーーい

結は心の中で叫ぶ

いちゃいちゃしたーーい、これが私の彼なんだと自慢したーーい

自慢して、上から目線で「あらあら、うふふ」と見下ろしたい(男友達を)

ーー「あら、あら、まだ恋人のひとりもできませんの?ふぅ、遅れてますわね」


心の中で、あ、殺されるなっていうかそんなことしたら干されると思わなくもなかったが、いちゃいちゃしたい


強い衝動にかられる

さっきまでどうも思ってなかった男に、今は胸の疼きを感じて仕方ない

恋?これが恋なのかもしれない

「、、、あの、キス、しませんか」

「-ああ、いいよ」


埴岡の方から、結の顎を持ち上げその頬にそっとキスをし、、、唇に接吻をする

「、、、ん」


ーーどくん、結の内側で止められぬ何かが火を噴いた

それまでとことなった何かが


接吻をしたあとの結はとろけている

「ん、、、あ、私、あの、--埴岡、さんですよね、今度デートに付き合ってくれませんか」

「ああいいよ、じゃあ今度の僕が連れてきたいところでいいかい?」

「-ええいいですよ」

「じゃ、今度の日曜で」

デートに次ぐく

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