第一章ー第壱話天王寺鯨
ーー思えば、それがいけなかったのかもしれない
今、眼前にそびえたつ現実は、致命的でもある
ーー人が一人死んだ
「、、、、、、」
本当に悲しいとーー心が何も感じなくなるということを初めて知った
鯨はその水になった死体を見ながら、薄く笑った
ーもう、こんなことにはさせない、守りきる、と
「それが、これですよ」
ーー埴岡が無事に、衛生室をジャックして手術道具を取ってきた
「手伝いましょうか?」
「いい、それと細菌がついたら大変だから手を洗っといて」
ーー19人全員頭に機械を埋め込まれている
生体にしかけられたわなーーだが、その腕は震えてはいない
ーー震えてもしょうがないのだ
今、命を取りこぼしたらきっと後悔するから
「ふっ」
切開ーー機械発見ーーメスで切り裂く
「爆発」--壁に穴が開く
ーー摘出完了、いや、脳の内部をえぐりからみついてる
ーーだから、負けると
「大内工場」--「発動」
この能力は体内で何かを作り出す技だ
「--解毒薬、完了」
ーー機械のみを溶かし、生体には傷をつけない薬で溶かす
「、、、驚きました天王寺博士そんなこともできたんですね」
「まぁ、ね、体内工場は本来こういう使い方のほうがあってるのさ
ーーー一人目」
縫合
「先に行っといていいよーー嫁が待ってるんだろ、パパになったんだろ
ならいきな、どうせーー私も19人全員救えてもすぐに帰る気はないんでね」
縫合完了ーー
(は、早いこれが韋駄天ーーもし、もしも会社をやめなければ一番になれたかもしれないなんて人だ)
埴岡は息をのむ、このまま見ていたかったが確かに奥さんの方にいかなければいけない
「--初めにいっておく、産後は暖かい言葉と温かいスープをおごってやれよ」
「はい」
埴岡は消えるーーおそらく、この場所を出るのだろう
埴岡の目標が19人を相手取り妻を追わせない、否、妻たちを追わせないことである以上役目は終わったということだ
ーー終わってないのは天王寺の方
同じ要領、、、とはすこし違うーー爆弾の解除に時間がかかる
ーー摘出、投擲ーー爆発ーーを繰り返す
何度も。何度も、極限の集中力と思いでもって止まらない手術をしている
ーーただのどしろーとが
しかし、このどしろーとは、7年間伊達に実験場にいたわけではない
その目で盗んだ
17人目ーーランプをともすーー手が紅く染まる
床は血でまみれている
ここを見た人は凄惨な殺人現場と勘違いするであろうことは間違いようがない
ーーバイタルも、脈があるかどうかくらいしかわからない
そんな中ーー18人目――終える―19人「ふーーー」開始
きっと、殺人の協定なのだ
昔の自分がしてしまったことは
結果的に、今、救えているというだけで
一人救えなかったのだ
ーー「だから、もう、てめえらを失いたくないんだよ
私はな、嫌われたくないんだよー好かれたいんだよ
罪悪感を抱きたくないんだよ
罪悪感で泥だらけのまま行きたくはないんだよ、だから、救う」
ー愛してる、-愛してるー愛してるー愛してる
ー愛してるー愛してるー愛してるー愛してる
ー愛してるー愛してるー愛してるー愛してる
ーーああ、愛してるともさ
だからーー愛されたいんだよ
だれだってそうさ大事に思ってる人に嫌われたくないだろう
「--ああ、終わった」
ーー19人、救済完了
19人を誰も殺させずに済みーー或いは自分も罪悪感、悲しみ
慟哭。怒りを感じなくてよかったことへの感謝
「ふーー」
正直ここで眠りたいが、まだやることはある
ひとまず19人全員を木陰に隠すーかくして水になった死体を
出す
そして、そのまま手向けとして工場の外の木へかける
ーーこうすることにより
死体は木の一部となり、木を生かす
ーぱん、手を叩き拝むーーそれは葬式
酷く簡素で質素であるがそれは葬式だ
余った水を工場内で泳ぎ回る、夏祭りの金魚というひどくばちがいなものの水にして
持って帰る
「
金魚を袋の中に移し替えーー死体の水をいれる
手にぶらさげ、一人ひとりを起こす
「いこうーー帰ろうーー家へーあの子らに合わせてあげるだから今は休もう」
血と機械の残骸で汚れた19人が顔を上げる
否ーー顔をあげた
「おぎゃー」「おぎゃー」
「お、おい」
「ふふ、嫌われちゃいましたね」
面白半分で結は告げる
「あ、そうだ結」
「?」
「出産大変だったろ、そのあと走らせてごめんなー結、今日は結の家にとまっていいか
明日引っ越しの準備するからさーー結、ごめんな、大変だったろ」
「礼はいりませんーーきっと、今の今までずっとずっと女たちが繰り替えしてきたことでしょうから」
まぁ、結は基本的に
「--それより、だ、い、す、き、ですよ💛ダーリン」
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