02
依頼を受託し、男と共に向かう事になった。すぐに準備にとりかかったアルフォンスは、予備のエネルギーと銃を手にする。銃の重みが手に乗った瞬間、我に返った。自分は銃を未だまともに扱えない身である事を思い出したのだ。なのに、警備を担当するロボット――つまりは制圧力を持ち戦闘経験とデータのある相手に対し、どう立ち回るというのか。まったく想像が出来ず、その場で立ち止まってしまう。先輩に当たるライにまた口悪く指摘されるだろう。
それだけならば、まだいい。警備ロボットは捕縛や制圧用の武器を持つ。殺傷力は本来は高くはないが、指示系統に支障が出ている今の彼らは加減をしない。本来の使い方を越えて、叩きのめしてくる。その事実に背筋に寒気が走った。
階下の出入口で待つ依頼者からは、急き立てる声はない。深呼吸して、アルフォンスは持ったそれらを慎重にしまう。不安から、銃以外に熱線の出る武器を取ってポケットに突っ込んだ。
重い足取りで向かう。階段を一段ずつ降りていけば声がした。そこにいた人物を見て、アルフォンスの肩から力が抜ける。
「ぜ、ゼロさん……!」
運良くというべきか、ゼロが帰ってきていた。ゼロは依頼者と話をしていたようで、アルフォンスを一瞥だけして、続行する。話がついたようで、依頼者が歩き始め、その後をゼロがついていく。ゼロに促されてアルフォンスもついていった。
二人は依頼者を先頭にして歩きながら、声を潜めて話す。安堵感から明るい顔色だったアルフォンスだが、暗く沈んだ様相で謝罪した。勝手に受諾した事や、その依頼内容などだ。ゼロは彼が話し終えるまで黙って聞いていたが、全て聞くと応えた。
「報酬量や種類を明確に決めている訳ではないが、ある程度教える必要があったな。依頼に慣れている者は多くはない。安すぎたため、こちらで交渉しておいた。さして問題はない」
「すんません、安すぎたんですね」
「知らないものは仕方がない。今回私がタイミング良く帰ってきたが、一人で受ける事もあるだろう。自分で決めて受諾し、基準を調整していけばいい。最初は安すぎたり、高すぎる事もあるだろうが、それはそれで判断材料になる。今回の依頼は私が安すぎると感じただけで、自分一人でやる時は自身の裁量でやっていけばいい」
「はっ、はい!」
それ以外の事は仕事が終われば教える、と片手を振った。切り上げられたままに、そこで話は終わる。今回の依頼を遂行するために急いだ。
急ぎ足ではあったが、大分歩かされた。漸く足が止まったと同時に依頼主が物陰へと隠れる。それに倣うように二人も身を隠した。
到着した場所には、高いビルが建っている。まだ内蔵のエネルギーが残っているのだろう。蛍光色の文字が明滅していた。その周囲を何体もの人型の警備ロボットが不規則に
不意に、依頼者の男が振り返って二人を見る。
「いいか。私が安全に入り、持って出るまで道を確保するように」
「ああ、わかっている」
「が、頑張るっす!」
横柄な依頼者の態度を気にも留めず、肯定して二人は銃を抜く。銃を手にしたが、アルフォンスは緊張の面持ちだ。ゼロの片手が軽く腕に触れ、促してから先に出た。
眼界の手前には、二体の警備ロボットがいる。視界に入っているからか、依頼主は隠れたまま動かない。
今回持ち出した銃は、ゼロは以前アルフォンスの依頼を受けた時に使用した高火力の銃だ。アルフォンスの方は一般的な形状と大きさの物である。火力も並の物であり機械に対してはさほど効果はないタイプの物だ。だが、郊外の研究所で遭遇した〝
先行したゼロが、警備達のセンサーにかかり二体が近付く。標的に定まったのを感じ取った瞬間に一気に踏み込み、距離の近い方から対処に当たる。警備ロボは筒状の武器を手にしており、それを振り抜いた。エネルギーを感じ取れるそれは、打撲では済まない程に限界までに出力が上げられている。当たれば即座に意識を刈り取られる事は想像に易かった。
それに当たらないように身を
ある程度頑丈な外装だが、高出力で出されたエネルギーは表面を焼いた。押し当てられた状態で焦げていっていたが、両方ともリカバリーに入り、離れる。焼けたのは表面だけで、内部までは辿り着かなかった。
傷としては軽微で倒すまでには遠い。しかし、それだけで十分だった。
道を通れるだけの時間は作った。促すよりも先に、依頼主は出入口まで入っている。ゼロはその後ろにつき、退きながら脚部を撃って追走を妨害した。駆け寄ったアルフォンスもそれに続く。両手で持った銃を向けながら、後退し先に依頼主を追いかけたゼロを追って駆けた。
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