05
仲間に加わりたいと、アルフォンスは申し出た。払えそうにないから、働いて返す。そう言っているのだと取れた。ライが微妙そうな表情でうなじを掻く。
「いやお前、食料送られてくるんだろ? ちょっと凌いで、送られてきたそれをいくらか持ってこいよ。それでいいぞ、こっちは」
「それはもう出来ないっす。隔離ってレベルじゃないんすけど、うちの畑全部汚染されちゃって、土地自体がダメになったし、今はもう家族全員、都市に送ってるんですよ。それに金もないし、運送も今は厳しいし……それに」
伏し目がちに、他で補えそうにない理由を羅列したアルフォンスは、再度ゼロを見据える。ゼロは食べ掛けのチョコレートバーから口を離していた。アルフォンスは両手をテーブルにつく。
「オレもゼロさんみたいに、誰かの力になりたいっす!」
「……悪いが、お前が思っているものとは違う。夢や希望のない現実だ」
良くも悪くも若い青年の願望の混じった志願に、冷徹に返す。それは矯正するようでもあった。
「私には別の目的がある。その傍ら、情報集めや次の日に繋ぐためにしているに過ぎない。食料に関する話があったが、手に入れて分けられるとも限らない。依頼も多くはないし割りに合わない事もある。武器は、ある分を支給は出来るがレクチャーがついている訳ではない」
「ヒーロー志願者ならやめとけって事だ」
「別にそういう訳じゃ……。ただ、オレ、あの子の声は聞こえたのに、助けようとは思ったけど、どうすればいいかわからなくて。もしバグったロボットとか出てきたらオレ戦えないし……」
ライが
チョコレートバーを一本食べ終えたゼロは、傍らから飛んできたドリンクの容器をキャッチし、液体で口の中を洗い流した。
「そんな大それた理由で入るような場所ではないが、依頼料の支払いが出来なさそうなのも事実だ」
「助けてくれそうだから頼ってきてるだけで、こっから支払えるか怪しいけどな」
「そっすよ! 頼ってるんスよ!」
「おーおー、
承諾されそうにない状況に、開き直ってアルフォンスは訴える。目の前の頼れそうな大人に、助けを求め続けた。ゼロが息を吐く。
「たくさん人を助けるのはもちろん、雑用とかしますし、その別の目的とかも手伝うので! お願いします!」
謝罪と懇願の言葉を、続けて小さくアルフォンスは繰り返す。外に放り出したところで、何だかんだ生き延びそうな青年ではあるが、面倒をあまり見ない前提ならば悪くは無かった。結局は面倒を見る羽目になる可能性はあったが、探し物には人手があった方がいいからだ。
暫く沈黙して思案したゼロだったが、やがて口を開いた。
「拾って入れてしまった責任はある。食は約束できないが、共に行動するといい」
「あ、ありがとうございます!」
「依頼料分は働いてもらうぞ」
頬を紅潮させ目を輝かせたアルフォンスが何度も首を縦に振る。今にも跳び上がりそうだ。話は終わりと見たのかゼロが席を立つ。グラスを取り出し、残っている飲料水を注いで、自分のお気に入りの瓶を求めて集まっている場所へと近づいた。それを一瞥してから、ライがアルフォンスの肩に腕を置いて耳元で耳打ちする。ライから囁かれた内容を聞いたアルフォンスは、目を見開き両手で拳を作った。
「ゼロさん、オレ一生ついていくっス!」
「……何を吹き込んだ?」
腕を上下に振り突然、意思表明をしたアルフォンスに、ゼロが振り返る。瞬間的に腕を肩から離したが、隣に立っているライに訝しげに視線を送った。口笛を吹いて顔を背け、ライは何も言わない。言わなくても良い事を伝えたという事だけしか、ゼロには分からなかった。
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