慣れ
日曜日――つまり夜叉神さんの家に行く日は、太陽の日がギラギラと照っており、夏並の気温の高さだった。
流石に長袖では暑いので、俺は半袖を着ていた。
「なんでこんなに暑いんだ……」
太陽を睨み付けながら愚痴を叩きつつ、隣を歩いている香織を見ると、顔に手で風を送っていた。
「明日でもう六月だからね、私もワンピースにして良かったよ」
流石にこの気温では香織も暑かったのか、ワンピースを着ていた。そのわりには汗をあまりかいていないが。
黒地に白の水玉の着いたワンピースと、白のサンダルを履いていて、とても涼しそうな格好だ。
「おーい、こっちこっちー」
翠と大地との待ち合わせ場所につくと、すでに二人が俺たちを待っていた。
こんな暑い日でも変わらず翠は元気で、手をブンブン振っている。
「揃ったみたいだから行こうか」
「大地くんはちーちゃんの家に行ったことがあったんだっけ?」
「前に三人ともいなかったときに成り行きでね……」
翠が大地が夜叉神さんと一緒に帰った話を聞いていて、じとーっとした視線を送っておるのに気づいたのか、大地のばつの悪い顔になる。
◇ ◇ ◇
「着いたよ」
大地がそう言って足を止めた家は、なかなか立派な家だった。
白いセダンタイプの高級車に、真っ黒のジープが車庫に駐車している。
そして、2メートル超えの塀で囲われており、俺たちの目の前にたたずんでいる門扉もその例に漏れず、2メートルを越えている。
「大きな家だねー」
「夜叉神さんが学校に通いやすいように新しく買ったらしいよ」
大地の補足を聞く限り、娘のために家を一件買う夜叉神さんの親は、相当な過保護のように思える。
そんなことを考えていると、インターフォンから夜叉神さんの声が聞こえてきた。
「あ、ちーちゃん? 翠だよー。遊びに来たよー」
『はい、扉を開けますね』
数秒後、ガチャンっという音ともに門扉がゆっくりと開いた。
『どうぞ』
「暑いなか来てくださってありがとうございます、みなさん」
吹き抜けのホールのすぐ奥にあるリビングで、夜叉神さんはペコリと頭を下げた。
「全然大丈夫だよ、楽しみにしてたからへっちゃらだよ!」
「そ、そんな……楽しみだなんて……嬉しいです」
翠の言葉に赤面し、もじもじする夜叉神さん。
「私、お友達と家で遊んだことがないので何をしたらいいのかわからないのですが……」
「あっ私DVD持ってきてるよー。ほら、グループLINEでこの前話したやつ。皆で見ない?」
「翠ちゃん、それってホラー系のやつ? それともギャグ系のやつ?」
香織がおずおずと翠に尋ねる。
基本的にこの5人のグループLINEは雑談しかしない。
恐らくその雑談のなかで話題になったDVDを翠が持ってきたのだろう。
「もしかしてかおちゃん怖いの苦手?」
「……うん」
「そっかー、いいこと聞いちゃったなー。でも今日持ってきたのはギャグ系の方だから安心して大丈夫だよー」
ホッと胸を撫で下ろす香織だが、翠は違う。次にまた遊ぶときは、香織を逃がさないようにがっしり捕まえて、絶対にホラー系のものを持ってくるだろう。
「大地さんはホラー系大丈夫なんですか?」
「元々苦手だったんだけど、翠のせいでなんとも思わなくなったよ」
「私の"せい"じゃなくて、私の"おかげ"でしょ。おかげで大地と遊ぶときはホラー映画見れるようになったし」
「香織ちゃんも僕みたいにならないように気を付けた方がいいよ」
「う、うん」
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