ほら、そもそもの<正しい状態>や<問題のない状態>ってものを知らなかったら、何が<正しくない>のか<問題がある>のか分かんないじゃん。主人公は、両親からそれを教わることができなかった

星谷ひかりたに重工が開発したアリサは、それまで百年にわたって開発が続けられてきた代々のヘルパーロボットをはじめとした各種ロボットとそれに搭載されたAIが蓄積してきたデータを基に、主人公の育て直しを始めるんだ。


主人公が抱えてる問題の多くは、結局、自己肯定感の低さが原因だからね。


もちろん、だからって主人公のこれまでの行いのすべてが肯定されるされるわけじゃない。


自己肯定感を満たすというのは、その人を、ただ一方的に. 全肯定することじゃない。


よくないことはよくないこととしてしっかりと、区別はしながらも、その人をその人として認めるということなんだ。むしろ、自分のこれまでの行いの何がよくなかったのか適切じゃなかったのか、何故よくなかったのか何が適切じゃなかったのかを学び直すことなんだよ。


ただ、そのためには、明確な<基準>になる部分が必要でさ。その<明確な基準>を作る作業こそが、<育て直し>っていうものなんだ。


ほら、そもそもの<正しい状態>や<問題のない状態>ってものを知らなかったら、何が<正しくない>のか<問題がある>のか分かんないじゃん。


主人公は、両親からそれを教わることができなかった。まず大前提として、主人公は、両親から、


『人間として扱われてこなかった』


んだよね。


<両親の自己実現のための道具>


<両親の自己満足のための道具>


として扱われてきたことで、


<人間としての在り方>


を学んでこなかったんだ。


両親は、『自分達の期待通りにしていればそれが人間として正しい姿だ』と思ってたみたいだけど、いやいや、根本的に認識が歪んでるから。


『自分以外の人間が百パーセント自分の思い通りになることはない』


って事実がすっぽりと抜け落ちてるから。


父親にとっては、


<高級官僚になることこそが幸せ>


なんだとしても、それだと、


『この世の中の<高級官僚以外の人>はみんな<不幸>だ』


ってことになっちゃうじゃん。それはいくらなんでもおかしいでしょ。事実、主人公にとっては、『高級官僚になる』というのは、<何が何でも目指したい目標>とは思えなかったから投げ出しちゃったわけでさ。


主人公は、


<父親とも母親とも違う別の人間>


なんだよ。その当たり前の事実を、両親は理解してなかった。だとすれば、まず、主人公に、


『自分が<他の誰でもない一人の人間>であることを理解してもらう』


必要があるわけ。


アリサに搭載されたAIはそれをわきまえていて、とにかく丁寧な対応を実践してくれるんだ。ただただ<一人の人間>として扱ってくれるんだよ。


ロボットだから、主人公のどんな理不尽な振る舞いにも動じることなくね。


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