最初は興味を示してやる気を見せてくれてたのに、やっぱり小さい子って集中力は続かなくて、すぐにやる気をなくしちゃうんだよ。そこで無理に続けようとしても、当然、上手くいかない

主人公は、地方公務員の父親と、専業主婦の母親の間に生まれ、少なくとも経済的には何不自由ない幼少期を送った。


ただ、両親は、最初から、長男に対して過度の期待を寄せてたんだよね。父親は母親に任せっきりだったけど、だからこそ母親はすごく気負ってて、生後二ヶ月くらいから<幼児教育>を始めてさ。


あ、でも別に<幼児教育>が悪いってんじゃないよ? 私も子供達に対してやったしね。だけどその時に、


『これはマズいな』


って感じたことがいくつかあったんだ。


その一番が、<押し付け>。


子供が乗り気じゃない時に無理にやろうとすると、明らかに機嫌が悪くなって意欲がまったくなくなってしまってた。意欲がないから集中できないし、覚えも遅い。で、集中してくれないし覚えも遅いからやってる方も苛々してくる。


で、最初は興味を示してやる気を見せてくれてたのに、やっぱり小さい子って集中力は続かなくて、すぐにやる気をなくしちゃうんだよ。そこで無理に続けようとしても、当然、上手くいかない。


だから私は、あくまで遊び感覚で、興味を示してくれた時にさっとやって数分でさっと終わるってのを心掛けてた。


「あ、あさがおの、あ。い、いぬの、い。う、うしの、う。え、えびの、え。お、おにぎりの、お」


って感じで、ひらがなの裏に絵が描かれたカードを見せるってやつをつかってさ。


それとか、お絵かき歌を歌いながらホワイトボードに絵を描くのとか。


主人公の母親も、最初はそうしてたんだけど、首が据わって自力でお座りできるようになった頃、主人公が、


「あさがおはどれかな~?」


「いぬさんはどれかな~?」


って母親に訊かれると、しっかりとあさがおや犬の絵が描かれたカードを手に取るようになって。


すると母親は、


「すごい! あなた天才よ!!」


と、あるあるな親バカぶりを見せてさ。話を聞いた父親も、


「この子はきっと官僚になれる!」


とか、大喜び。


で、ますます主人公に過剰な期待を寄せるように。


そんな両親の熱心な教育により、主人公は、二歳になる頃には、英語とかも、あくまで『幼児として』ではあるもののペラペラに話せるようになっていた。


これで期待するなと言う方が確かに無理かもしれない。


主人公は、小学校の頃は確かに優秀だった。テストも満点が当たり前で。


だけど、中学に上がると、さすがに毎回満点とはいかなくなってきた。すると両親は、


「何だこの点数は!? サボってたのか!?」


「どうしたの? 体の具合でも悪かったの?」


的に、主人公に圧を掛け始めるんだよね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る