ものの価値
創作物の<価値>を売り上げや認知度だけで語るのがいるけど、そういうのって結局、
<資本主義社会、市場原理社会の走狗>
だと私は思う。
いや、だからって私は別に資本主義社会や市場原理社会を否定したいわけじゃないんだよ。
『資本主義社会、市場原理社会においては、売れるもの金になるもの=価値があるもの』
ってのも事実だと思う。
でもさ、<ものの価値>ってのは、
『売れるもの金になるもの』
だけじゃないでしょ? それはあくまで<価値基準の一つ>でしかない。
特に、創作物に関しては、さ。
百人中九十九人が、
『つまらない』
『面白くない』
『駄作だ』
というものであっても、たった一人でも、
『面白い』
『好きだ』
って感じる人がいたら、その人にとっては間違いなく、
『価値があるもの』
なんだよ。
それを他の九十九人が馬鹿にして腐して貶める。
そういうのが<生き易い社会>だと思う?
私はそうは思わない。
しかも、そんなことしてるから、
『話題になりさえすれば、売れさえすれば、それで勝ち!』
ってことで、いわゆる、
『<ごり押し>で価値があるものに見せかけよう』
なんて手法が成立するんじゃないの?
『売れるもの金になるもの』『話題になってるもの人気があるもの』ばかりに価値があるとか考えてるから、
『ごり押しでも何でも売れりゃ勝ち』
ってのが成立するんじゃないの?
まあ、私の場合は、そのごり押しさえしてもらえないけどさ。
でも、それでいいと私は思ってる。
確かに、私だって、人気が出てすごく売れたら嬉しいと思う。気分もいいと思う。
『売れたって別に嬉しくない』
なんて気取ったことは言うつもりもない。
たださ、私にとっては、売れることそのものが目的じゃないんだよ。
私はとにかく創作を続けていきたいってのが一番なんだ。
人気とか売り上げとかで神経をすり減らして創作が嫌になること自体が嫌なんだ。
ものすごく売れたけど、でもその中で精神をやられて筆を折っちゃった創作者もいるんじゃないの?
私はあくまで、
『そんなことになるくらいなら、創作を嫌いになるくらいなら、続けられなくなるなら、売り上げなんて人気なんてそこそこでいい』
ってだけ。
今でも十分、家族五人、生活できてるし。
ただこれも、
『生活できてるからそんな風に思える』
ってのもあるのは事実だけどさ。
生活できてなきゃ、たぶん、<売れるもの><人気が出るもの>を必死になって書こうとしてたと思う。
だけど私には、
『<売れるもの><人気が出るもの>を書こうと思って書ける才能はない』
ってのを、ここまでの作家人生の中で嫌というほど思い知らされてきた。
それでも、こんな私の作品でも、
『面白い』
『好きだ』
と言ってくれる読者はいるんだよ。
『資本主義社会、市場原理社会においては、売れるもの金になるもの=価値があるもの』
っていう<物事の一面>だけで価値を決めてしまって、そう言ってくれる少数の読者を切り捨てていいとも思わないんだ。
もっとも、商売でやってる出版社としては、そんな、
<はした金にもならない小数の読者>
なんて、相手にしてられないだろうけどさ。
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