初夢



 普通、夢は起床後の17秒くらいのあいだに、書きとめるか記銘しないと、忘れるそうです。

 そう言うと、「いや、そんなことはない、私はもっと後でも思い出せる」、とか反論がたくさん出そうな気もするが、これはあくまでも一般論だと思う。

 一般論というのはだから、例えば統計とかで考えると、正規曲線?の真ん中の膨らんだ部分の大多数、マジョリティを掬いあげた謂いなのだと思う。

 大体が、あらゆる事象はそういう曲線を描くという、そういう発想で統計学は成り立っている、のだと思う。

 選挙で、開票率が10%とかでもう当選確実が出たりするのは、こういう統計学的な普遍性の敷衍の正確さというか経験的な事実に基づいているのだと思う。

 が、純理的にそういう統計の正確さの根拠というのを勉強とかしたことがないので、なぜに統計の結果が、無作為抽出とかのサンプルで、全体を類推することが、正確な指標になりうるのか、はよくわかりません。

 だから何か、そういういきさつや事情を説明してくれる本とかあると面白いな、と思います。あるいは、そういう一般論がまた一般的に成り立つのだ、そういう入れ子の構造になっているのかもしれない。

「蓋然性のループ」とかそういう術語があるのかもしれない。(想像ですが)

 遷移循環していくうちにだんだんにバイアスがミニマムになっていくとか、そういう論理かな?とこれも想像です。


「統計学は最強の学問である」という書籍の広告を見たことがあったけども、一回読んでみたいな、くらいに不思議っぽい興味があります。


 文学と科学はふつう別物と思われているが、E.A.ポーの何かの随筆が、現代物理学に酷似した世界観を描いているといって、本の解説者がポーの直観力は、すごいと書いていたことがあった。

 僕もそのころポーの本と物理の本を並行して読んでいて、同じことを感じていたので、よく記憶に残っている。

 かのジーグムント・フロイトはまじめに夢を科学的に分析しようとしたのだろうが、筒井康隆氏によると、氏は結局フロイトは「仮説の文学」だと結論付けているらしい。

 セクシャルなコンプレックスが神経症の原因、これはその時代に共通の事実だった、かもしれないが、その仮説や方法論に科学一般ほどの普遍性は無い。

 しかしある程度の治療的な実効性と社会的な影響力があって、理論としても物語性があって魅力的で、そこのところで「文学的」と位置付けるというのか・・・そういう感じかもしれない。

 友人の寝間の本棚に、「夢分析の実際」という浩瀚な本が置いてあることがあって、どんな内容だったか聞きそびれたが、文字通りに夢を科学していた、フロイトやユングを踏まえたうえで現代的な夢分析はこういうものだ、という解説だったのだろうと思う。ちょっとクライがまじめな人だったので、夢を何とか自分というものを理解する手掛かりにしたいのだなあ、と思っていた。


 曖昧ですが、現代科学では夢は記憶を取捨選択して、整理、定着させる作業とされている、らしい。

 しかしこれも一般論で、どっさりと個別な例外があると思う。

 そういう例外のほうが実は重要なわけで、文学的?な、スーパーナチュラルな夢が人間存在にとって本当に意味のある現象ではないだろうか・・・

 予知夢、正夢、虫の知らせの夢、夢占いから、荘子の「胡蝶之夢」、邯鄲?の「一炊の夢」フロイト的な潜在意識の発露の夢、ユング的な普遍的な無意識からくる神秘的な元型の夢・・・に至るまで、夢というアイテムに関わる発想はそれぞれに異彩を放っていて興味深いものがあり、尚且つ人間の精神と存在の神秘な謎に迫るための貴重な手掛かり、keyとして、夢を把捉している点で共通している。

 夢にはそうした知的な好奇心を掻き立てる独特のミステリアスなムードがあると思う。

 ですから統計学的な散文的な夢理解だけでは、それこそあまりに「夢がない」話だと思います。

 夢のすばらしいイメージを絵画にしたダリ、漱石の「夢十夜」。そういう芸術的な、ポエジーのある、夢の底知れない魅力を遺憾なく発揮している、出来ればそういう初夢を、今夜これから見たいものだと思います。


(僕は実際、そういうイマジナティヴ?な夢をよく見るタイプです。)


 では、おやすみなさい、よい初夢を・・・



(2019.1.2)

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